アメリカが抱える問題を提起するために、過激なアポなし突撃取材と、歯に衣着せぬ物言いで、さまざまな社会問題を独自の視点で取り上げ、ドキュメンタリー映画を作ってきたマイケル・ムーア。

 彼は、銃問題を徹底取材した「ボウリング・フォー・コロンバイン」で米アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を、ブッシュ政権の対テロ政策をテーマにした「華氏911」でカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞し、その後もアメリカの現実(ムーアの視点ですが)を伝える作品を次々と送り出してきました。

 今回はアメリカ国内から飛び出して、“侵略”するためにヨーロッパ各国などを訪れ、アメリカにはない“良いこと”を“略奪”するミッションに挑戦したムーア。それは、それぞれがその国の常識なのですが、アメリカ人のムーアには驚くことばかり。そして、日本人の私にも驚くことばかりです。

 イタリアの「労働者にとても優しい有給制度」や、フランスの「豊かな心を育むフルコースの給食」、ノルウェーの「犯罪者の再犯を防ぐ驚きの対策」など、本当に自国に持ち帰りたい素晴らしいものばかり!

イタリアでは1年間で8週間休暇が与えられる。昼休みは2時間と聞いて驚くムーア
イタリアでは1年間で8週間休暇が与えられる。昼休みは2時間と聞いて驚くムーア
フランスの小学校では陶磁器の食器でフルコースの給食が出る
フランスの小学校では陶磁器の食器でフルコースの給食が出る

 中でも、世界初の女性大統領が誕生したアイスランドを取り上げたパートは、特に感動的でした。「企業の役員の40~60%は女性でなければならない」というアイスランドでは、完全な男女平等政策がとられ、「世界で最も女性が住みやすい国」だと本作では伝えています。なぜ、こんなにも女性の社会進出が進んでいるのか? 映画の中で詳しく語られているので、注目してほしいです。

世界初の民選の女性大統領、アイスランドのヴィグディス・フィンボガドゥティル
世界初の民選の女性大統領、アイスランドのヴィグディス・フィンボガドゥティル

 ほかにも、世界の素晴らしい方針やアイデアがいくつも紹介され、ムーアと共に驚きながら、気が付くと涙があふれていました。海外には、有益な政策を行っている国がこんなにも多いのですね。さらに、女性がリーダーとなって力を発揮しているアイスランドのような国の内情も知ることができ、有意義な時間を過ごせる「マイケル・ムーアの世界侵略のススメ」。傑作ドキュメンタリー映画である本作は必見です!