――ギリアンとは、リビーという役柄について話をされたのでしょうか?

 「(監督・脚本の)ジル(・パケ=ブランネール)の脚本がとても良かったから、撮影に入る前は特に話すことはなかったの。ジルはギリアンといつも一緒にいて、私はジルから彼女の話を聞いていたの。二人は物語の舞台のカンザスや、ギリアンの郷里にも行ったのよ。ジルはカンザスの風物を求めていたのだけれど、彼はフランス人だから、ギリアンが案内して、親交を深めっていったの」

監督のジル・パケ=ブランネール(中央)とシャーリーズ・セロン(右)
監督のジル・パケ=ブランネール(中央)とシャーリーズ・セロン(右)

 「私とギリアンはジルを介して知り合い、ギリアンがカメオ出演で現場に来た時、初めて彼女に会ったのよ。彼女は“リズィー・ボーデン”という役で出演しているんだけど、“殺人クラブ”(後のあらすじで説明しています)で斧を持って座っているの。とても面白い人なのよ! カメオ出演を引き受けてくれて良かったわ。彼女や彼女の作風に共感できるし、女性の描き方が見事だと思う。すごくリアリティーがあるから、読者からも共感を得ているんだと思うわ。身びいきだけど、リビーはお気に入りの役なの。ギリアンとたくさん話をして、リビー誕生の経緯などを聞いたわ。一緒にいた時間は短いけれど、不思議と彼女とは気が合ったの」

――役作りはどのようにしたのでしょうか?

 「そうね、私は原作から離れた時に面白いものが生まれるものだと思っているわ。私の経験から言えるのは、正しい解釈で演じるより、本質をつかむことが大事。原作の通りにやっても、良い映画は作れないし、忠実なものができるわけではないの。原作の本質を生かしてこそ、良い映画が生まれるものなのよ。

 もちろん作品によって役作りは変わってくるし、今回も壁が待ち構えていたわ。原作のリビーは、身長が157センチで、巨乳の赤毛だけど、身体的な特徴は変えられないから、彼女の本質的なところを表現することを大事にした。見た目をまねることよりも、もっと大事なことだと思ったの。

 リビーについては情報をたくさんもらえたんだけど、最初に分かったのは、子どもの頃に体験した事件の後、発達障害になったこと。そう生きるしか方法がなかったのね。大人になることを自分で拒否しているのよ。定職にも就かずに、無責任な若者として暮らしているのは、恐怖のせいなの。彼女は自分の人生の真実を見るのが怖いのね。悲惨な経験をしていなかったとしても、彼女のことは理解できるわ。人間は自分のことを、いろいろな意味で見たくはないの。それは痛みを伴うからよ」

――ありがとうございます。では最後に、映画製作の仕事の内容や、経験した感想を教えていただけますか?

 「準備段階から、キャスティング、ロケハンなどにも参加したの。映画製作の仕事は、とても楽しかったわ。製作する上で生じる問題を解決するために、私の20年の演技経験を生かすことができた。経験の浅いジルには『ほら、こんなこともできるわ』とか『別の方法もあるんじゃないかしら』という風に提案もできたしね」

ジルと話し合いながら撮影を進めるシャーリーズ。右は共演のニコラス・ホルト
ジルと話し合いながら撮影を進めるシャーリーズ。右は共演のニコラス・ホルト

 「今回、キャストに関しては早めに決まったの。キャストもスタッフも一緒に『真剣に頑張ろう!』という、そういう体制だったわ。(リビーの母親役の)クリスティナ(・ヘンドリックス)はもちろん、ほかの俳優も積極的だった。みんな脚本に感動して、参加してくれたのよ。大変な仕事なのに、少ないギャラでね。無事に撮影の最終日を迎えられたのは、キャストのおかげだわ。全員が素晴らしかった! この映画にとても感謝しているわ」

クリスティナ・ヘンドリックスもシャーリーズ同様、美人を封印して熱演している
クリスティナ・ヘンドリックスもシャーリーズ同様、美人を封印して熱演している