クレイグ・シュルツ(製作/脚本)
「ピーナッツ」の原作者、チャールズ・M・シュルツの4番目の子どもとして生まれる。チャールズ・M・シュルツ未亡人のジーン・シュルツと同じく、「チャールズ・M・シュルツ・クリエイティブ・アソシエイツ」の仕事を通して、兄弟を代表して父の遺産を引き継いでいる。本作で、息子のブライアンと執筆パートナーのコーネリアス・ウリアーノと共に、脚本家およびプロデューサーとして協力している。熱烈な飛行家のクレイグは、20年に渡って、アメリカ・カリフォルニア州のサンタローザでチャーター便の会社を経営していた。現在、妻のジュディと共に、サンタローザに在住。

――「I Love スヌーピー THE PEANUTS MOVIE」、とても楽しく拝見しました。漫画が3D/CGアニメーションになると、違和感を覚えることがあるのですが、本作にはそれが全くなく、「ピーナッツ」の世界が完全に再現されていて、ファンとして感動しました! 今回、3D/CGアニメーションを製作するにあたって、一番大事にされたことは何でしょうか?

 「ありがとう! そうだね、一番こだわったのは、父のコミックに忠実でなくてはいけないというところだ。私と息子のブライアンと、コーネリアス・ウリアーノの3人で脚本を練っていく中で、新しいものを出すのはやめることにしたんだ。コミックの中の世界を映画化するには、ダイヤル式の電話やタイプライターを登場させ、コンピューターやスマートフォンといったものは描かないことにしたよ」

――ストーリーにおいて、何か意識されたことはありますか?

 「これまでの『ピーナッツ』の映像作品の中で、一番洗練された内容にしたよ。いろいろなサブストーリーも展開させたから、1回見ただけでは把握し切れないような物語になっていると思う。スヌーピーの想像の世界のシーンについて、ある仕掛けがラストで明かされるが、気付く人があまりいないようだ」

――私は分かりました!

 「さすがはファンだね(笑)。もう1つあるんだが、チャーリー・ブラウンと凧についての仕掛けは分かったかな?(ネタバレになるのでクレイグさんがしてくれた説明を省略)」

――あぁ、それは気付かなかったです……。もう一度見直します!

 「そうか、ぜひそうしてくれたらうれしいよ(笑)」

――スヌーピーの想像の世界といえば、彼が第一次世界大戦の空軍撃墜王“フライング・エース”として活躍するシーンがありますが、飛行家でもあるクレイグさんのアイデアが反映されていたりしますか?

 「そうだね、5名ほどのトップ・アニメーターたちを私の操縦する複葉機に乗せて、逆さまにしたり、いろいろな動きをしてみせたりして、実際に体で感じてもらって、映像を作る参考にしてもらったんだ。操縦した音も録音してもらって、それが音声として使用されているよ。ほかにも、ブライアンと私で模型の複葉機を使って、アニメーターに動きを見てもらったりしたね」

臨場感あふれるスヌーピーの飛行シーン!
臨場感あふれるスヌーピーの飛行シーン!

――スヌーピーは特別な存在ですが、チャーリー・ブラウンをはじめ「ピーナッツ」の登場人物は、自分や、周りにいる人たちに当てはまるキャラクターばかりだと思います。私は親によると、幼い頃はライナスのようにお気に入りの毛布を手放さない子だったそうです。お父様のチャールズさんは、クレイグさんを参考にしたキャラクターを描いたりしたのでしょうか!?

 「どうかなぁ。私も毛布を持っていた頃があったと思うが、どちらかと言うとビッグペンに近かったかも(笑)」

――いつもホコリまみれだったのですか!?(笑)

 「遊んで泥だらけになることがしょっちゅうだった(笑)。汚れてもすごく楽しくて、ハッピーな子どもだったんだよ。ビッグペンは汚れていることを気にせず、ハッピーなキャラクターだよね。そこが私と同じだ」

――世界一有名な漫画家が父親だというのは、子ども時代から大人になるにかけて、大変だと思うことが多かったですか?

 「そうだね、ある意味、大変なこともあったとは思うが、幸いなことに父は、自分が好きなことをして夢をかなえたように、子どもたちにも自分の好きな道を歩むようにと育ててくれたんだ」

――クレイグさんはお父様が遺された「チャールズ・M・シュルツ・クリエイティブ・アソシエイツ」のお仕事を受け継いで、息子さんのブライアンさんにも受け継がれていますよね。今後は、どのような展望をお持ちでしょうか?

 「『チャールズ・M・シュルツ・クリエイティブ・アソシエイツ』の役割は、世の中に出回る商品を全て管理することだ。毎月4000ほどのアイテムが出ていて、15人から20人くらいのスタッフで管理の作業を行うんだが、我々としては極力『ピーナッツ』の製品があるべき姿であるように心がけているよ」

――「ピーナッツ」の製品といえば、やはりスヌーピーのグッズが多いですが、日本では「ピーナッツ」の主人公はチャーリー・ブラウンではなくスヌーピーだと思っている人が多いようです。今回、映画を製作するにあたって、チャーリー・ブラウンとスヌーピーの物語のバランスをとるのに、どのような工夫をされましたか?

 「そのバランスについては、とても気を付けたよ。物語はチャーリー・ブラウン中心で展開していくようになっていて、彼の1年を描いている。彼が赤毛の女の子と出会う物語だ。スヌーピーはもちろん登場するが、あまり出し過ぎないように注意しなければならなかった。それでもアニメーターたちが、いろいろなシーンにスヌーピーを登場させようとしたりすることがあったから、チャーリー・ブラウンの後にスヌーピー、そしてまたチャーリー・ブラウンという風にバランスを調整するようにしたよ」

――チャーリー・ブラウンは、いつも失敗ばかりしているキャラクターですが、彼は誰からも愛される男の子ですよね。クレイグさんは彼のどんなところが好きですか?

 「チャーリー・ブラウンは、人生の教訓になることを伝えるキャラクターだと思う。今のアメリカの子どもたちは勝ち組になることが大事だと思ってばかりで、勝ったら、それ以上努力しなくなってしまっているんじゃないかな。チャーリー・ブラウンは毎日失敗ばかりして、野球でも千回くらい負けて、負け方もひどかったりするけれど、もっと一生懸命やろうとする。それがメッセージとして伝わるところが良いと思うね」

――ありがとうございます! それでは最後に、読者にメッセージをいただけますでしょうか。

 「チャーリー・ブラウンのように、常に諦めない姿勢で、努力し続けてほしい。それが僕からのメッセージだよ」