相手の攻撃を自分の武器にした「鉄の女」

 サッチャー元首相の代名詞としても知られる「鉄の女」。これは、女性の政府トップに付けられる愛称で、「強い意志を持つ女性」を描写するものだとされています。サッチャーは保守党党首時代に外交政策で当時のソ連の脅威を強調してきたため、ソ連軍の機関紙がサッチャーを揶揄して「鉄の女」と書いたのが始まりでした。

 ところが、意外にもサッチャーはこの呼び名を好み、演説で「ロシアは私を『鉄の女』と呼びましたが、イギリスが今必要としているのは『鉄の女』です」と述べるなど、自らこの名を使ったとされています。むしろ相手の攻撃を逆手にとって武器に変え、この名を広めたのはサッチャー自身だったのです。マスコミがこれをサッチャーへの皮肉をこめて多用していき、女性としてはネガティブな、政治家としてはひるまず隙を見せないポジティブなイメージになっていったのでしょう。

 サッチャーは、他国に対して断固たる姿勢を貫く一方で、国内でも例えば教育予算の大幅カットの方針に対して「教育水準の低下は避けねばならない」とキッパリ。その代わりに学校への無料ミルクの提供の廃止を行いました。うがった見方をすれば、容赦なく冷たい措置です。でも実は、鉄の女も一男一女の母でもあり、老朽校舎の改善費といった教育施設改善に必要な予算を確保するための苦肉の策でした。

 そしてメイ首相も、サッチャーとよく似た経歴を持っています。二人の共通点を見てみましょう。

サッチャーやメルケルとの共通点に注目

 メイ首相もサッチャー元首相と同様に中流階級の出身で、名門オックスフォード大学を卒業。さらにはメイは内務大臣、サッチャーは教育科学大臣と、大臣職を経験。こうした類似点から、ますます比べられるようになっていきました。

◆サッチャーとメイの共通点◆
 中流階級の出身
 オックスフォード大学卒業
 大臣職を経験
 タフで単刀直入。冷静で妥協を許さない。etc…

 メイの仕事ぶりも、激務をこなしながらも細部にまで気を配り、冷静で妥協を許しません。メイ自身は周りの評価に対してこう発言しています。

 「情け容赦がないとは思いません。ただ淡々と仕事をして、自分のベストを尽くすだけです。自分の性別が仕事に影響することにはノーと言い、女性だからという問題を感じたこともありません」

 性別は関係なく、自分のベストを尽くすだけ。それが、周りが何と言おうと気にせずにトップに立つ女性のスタンスです。

 さて、これからイギリスを先導するメイ首相の対EU交渉では、ドイツとフランスの指導者との関係がカギとなります。EU離脱交渉のキーパーソンとなりそうなドイツの女性首相アンゲラ・メルケル首相とメイ首相にもまた、因縁のような共通点が見られます。