小学生レベルの演説で、なぜトランプが人気?

 二人とも反TPP(環太平洋パートナーシップ協定)などは共通ながら、他の主な政策は次のようになっています。

両者の主な政策を整理しよう

○トランプ氏
不法移民の抑止。国境管理の強化。中国との貿易でもっと強腰に。
銃規制強化に反対。連邦法人税の大幅引き下げ。
米国第一主義。日米安保は日本の経費負担増による。

○クリントン氏
包括的な移民制度改革。犯罪司法制度の改革。大学の学費負担の軽減。
銃規制を強化。富裕層への課税強化。
同盟を重視。日米安保条約の尊重を約束。

 人気が拮抗している理由として、先週説明した民主党のクリントン、共和党のトランプといった所属政党のカラーを参照すると、支持者傾向も見えてきそうです(政党については前回記事「今さら人に聞けない アメリカ大統領選挙のキホン」を参照)。ただ10月に行われたテレビ直接討論では、ややクリントン氏が優勢です。

二人の演説の傾向

 当初20名ほどいた候補者たちの中で二人の人気が高かった理由の一つとして、演説も挙げられます。演説で使った言葉や表現などを解析すると、他の候補者の語彙レベルが高かった(つまり難しい言葉を使った)のに対して、トランプもクリントンも、小学生レベルの言葉を使っていました。誰にも分かりやすい言葉で訴えたため、人の心をつかみやすかったことが挙げられます。

 さらに、トランプにいたっては小学4年生程度の言葉のレベルでありながらも、歴代でトップクラスの文法バリエーションです。つまり、話し方が豊富で面白い。さらに、アメリカ人を第一に据える姿勢に共感する人たちも多かったようです。

小学4年生レベルの言葉でも豊富な文法バリエーションで人々の心をつかむ (C) PIXTA
小学4年生レベルの言葉でも豊富な文法バリエーションで人々の心をつかむ (C) PIXTA

 テレビ討論以降は、ややクリントンが優勢ながら、決定的な決め手に欠けるまま11月8日に「本選挙」を迎えます。では、いよいよ大詰めの「本選挙」や、12月の「選挙人選挙」を見ていきましょう。