米国大統領選挙は、いよいよ本選挙。実質的にはほぼ大統領が決まるとされるこの選挙で、ヒラリー・クリントンが勝てば、米国初の女性大統領ということになります。大統領選の基本的知識は、前々回「今さら人に聞けない アメリカ大統領選挙のキホン」、前回「小学生レベルの演説で、なぜトランプが人気?」でそれぞれ紹介してきました。今回は、前国務長官であり、大統領候補であるヒラリー・クリントンの人物像に迫ります。

ファーストレディ候補のクッキー対決を制したのは?

 ヒラリーはご存じの通り、ビル・クリントン第42代米国大統領夫人、つまり元ファーストレディです。筆者の私がまだ学生だったとき、ジョージ・ブッシュv.s.ビル・クリントン&アル・ゴア副大統領候補の選挙があり、若くイケメンとされた後者二人は人気者でした。

 大統領選挙では、そうした候補者たちに加えて家族やファーストレディ候補にも視線が集まるのも常です。当時の大統領選の脇で、雑誌「ファミリー・サークル」の企画でバーバラ・ブッシュとヒラリー・クリントンのチョコチップ・クッキーのレシピに投票をする「クッキーレシピ対決」が行われました。アメリカの「ママの味」対決というわけです。

アメリカの「ママの味」の象徴、チョコチップ・クッキー (C) PIXTA
アメリカの「ママの味」の象徴、チョコチップ・クッキー (C) PIXTA

 バーバラのレシピはバターを使った伝統的なものだったのに対し、ヒラリーは植物油を使ってオートミールを入れるヘルシー志向という新しさ。それはまるで、保守派の共和党(ブッシュ)v.s. リベラル派の民主党(クリントン)を象徴するかのような対決でした。

 良妻賢母の代表のように言われたバーバラに対し、ヒラリーは弁護士資格を持ち、「専業主婦になってクッキーを焼き、お茶を入れる選択肢もありました。でも、私は職業をまっとうすると決めました」と、主婦を敵にまわすような発言をして物議を醸す人でした。

 そしてクッキー対決を制したのは……意外にもキャリア派ヒラリーのもの。そして過去にもクッキー対決を制したほうが大統領にも選出されているように、ビル・クリントンが大統領となりました。

 今年はヒラリー・クリントンの配偶者として、ビル・クリントン元大統領がヒラリーのレシピを使い、トランプ夫人のメラニーとクッキーレシピ対決をしています。結果、1623票対535票で、クリントン元大統領に軍配があがりました。

 女性初の大統領誕生の可能性があるときに、その夫で元大統領が旧来のクッキー対決をしなければならないかは疑問が残るところです。でも、もしヒラリーが大統領になったら、ビル・クリントン元大統領は、ファーストレディたちのもてなしや公務でのパーティへの同伴など、クッキーを焼くだけでは話がすまなさそうです。

 さて、クッキーレシピ対決で勝利をおさめながらも、前回の大統領選ではオバマに敗れて国務長官として執務をしてきたヒラリー。その経歴をもう一度見てみましょう。