私と結婚したから大統領になれた!

 これは、ヒラリーとビルの有名なエピソードです。

 あるとき、ヒラリー夫人の故郷でガソリンスタンドの経営者らしき男が親しげに手を振っていました。

 「昔のボーイフレンドよ」

 というヒラリーの言葉にやや嫉妬をおぼえたビルが、こんな皮肉を言います。

 「僕と結婚していなかったら、君はこの田舎町で、ガソリンスタンドのおかみさんになっていたんだね」

 すると、ヒラリーはすかさずこう切り返しました。

 「何を言っているの。私と結婚していたら、あの男が大統領になっていたのよ」

「私と結婚していたら、大統領になっていたわ」 (C) PIXTA
「私と結婚していたら、大統領になっていたわ」 (C) PIXTA

 このエピソードの真偽はともかく、さすがに肝のすわった対応として有名で、ビル・クリントン自ら好んで人に話すほど気に入ったエピソードだったとされています。ビル・クリントンの浮気が騒がれたときにも、ヒラリーは「右派の陰謀だ」とするなど、政治家の夫を擁護しました。

 バラク・オバマ氏の大統領就任を経て人種の壁も超え、成熟してきたアメリカ。今の時代に必要なのは「女性」という視点よりも、力のある政治家ではないでしょうか。政治家としての経験が豊富なヒラリーではありますが、トランプと人気は拮抗(きっこう)しています。有権者が選ぶのはトランプかヒラリーか……。米国大統領選挙の結果がどうなるか楽しみです。

文/上野陽子 写真/PIXTA