こんにちは。著述・翻訳家の上野陽子です。今回のアメリカ大統領選挙でヒラリー・クリントンがドナルド・トランプに敗退し、敗北宣言のスピーチを行いました。毅然とした姿勢で行ったスピーチは人の心を打ち、大きな話題となりました。その内容を、英語の原文とキーワードを併せて見ていきましょう。


敗北と、今回の選挙の意味

 11月10日ニューヨークで行われたスピーチに、ヒラリーは紺と鮮やかブルーが映えるスーツに毅然とした姿ながら、笑顔で登場しました。

 今回の大統領選挙では、多くのマスコミがヒラリーの勝利を予想した中での敗北でした。勝利宣言を用意する傍らで書かれたであろうこの敗北宣言のスピーチながら、ヒラリーは原稿を読むことなく、顔をあげて思いを伝えきりました。

 このスピーチのキーワードとなるのは「痛みpain」「感謝grateful」「平等for everyone(誰しもに)」「夢と未来dream / young (若い人)」「挑戦fight(戦い)」でした。それは、ドナルド・トランプに祝意を伝えたくだりに始まり、敗北を残念であり申し訳なく思う気持ちを「痛み」として伝えています。

「この選挙戦は愛する祖国のためのものであることを決して忘れないで」とヒラリーは伝えました (C) PIXTA
「この選挙戦は愛する祖国のためのものであることを決して忘れないで」とヒラリーは伝えました (C) PIXTA

「みなさんが、どれほど失望しているか私にもわかります。なぜなら思いは同じだからです。」
I know how disappointed you feel, because I feel it too.

「この“痛み”は、長く続くことでしょう」
This is painful, and it will be for a long time.

「でも、決して忘れないでください。この選挙戦は、誰か一人のためでも、この1回の選挙のためだけでもありません。私たちが愛する祖国のためであり、希望に満ち、包容力にあふれ、寛大な心を持つアメリカを創りあげるためのものだった、ということを」
But I want you to remember this: Our campaign was never about one person or even one election. It was about the country we love—and about building an America that’s hopeful, inclusive, and big-hearted.