バツの悪そうな上司、理由は

 「今日の午後3時に、ここのカフェで打ち合わせしましょう」
 という返事がきた。指定されたのは、会社からずいぶん離れた店だった。
 3時すぎにカフェにつくと上司はもう席に座っていた。

 「チーフはこのあたりで仕事だったんですか? 会社からはけっこう遠いですよね」
 「すぐそこでアポがあったんです」
 「それで……今回の件は、どうすればいいですか?」
 「自分の夢をかなえるために行動していると、必ず壁にぶつかるときがくるんですよ。特にネットで活動していると、炎上することだってあります」

 いつものように淡々と話をしているけれども、ほんの少しバツが悪そうな表情をしている。

 「もしかして、チーフも炎上してしまったことがあるんですか?」
 「そりゃあ、まあ、ありますよ……。炎上についても、僕はアドバイスできると思います」
 「あ、やっぱり経験があるんですね」
 「でも、自分の夢を本気で見据えたら、やっぱり覚悟を持って、自分が活動する場所を守らないといけません。がんばっていれば、社内でヤグチさんのことを理解してくれる人だって増えていくはずですよ」

 上司は、私が転送したメールをスマホに表示させて、話を始めた。

 「カスタマーサポートにクレームを入れた人は、ひょっとするとメディアの人かもしれませんね」
 「えっ? そんなことわかるんですか」