はじめての後輩

 私が編集長を務めるサイトは、ちょっとずつ利益を出せるようになってきた。
 うれしかったのは、新しい編集者、アラタちゃんが参加してくれたことだ。
 とはいえ、編集の経験はない、私よりも年下の契約社員だった。

 「サイトへのアクセスは、このツールで見るの。記事がヒットしたかどうかは、まず“ページビュー”で確認します。それから、ツイッターとかで読者の反響を調べるには、このリアルタイムツールを使います。読者の反響はネタの宝庫だから、よーく目を光らせてね」

 いつの間にか私が“教育係”になっていた。
 いや、私が編集長なのだから当たり前なのかもしれないけれども、ほんの半年前まではやる気のない、ダメ社員だったことを考えると不思議だ。
 そういえば、アラタちゃんの教育について、上司は何も言わなかった。
 もっと言えば、「こんな仕事をさせたら?」という話すらなかった。

 この事業が飛躍するかどうかは、アラタちゃんがどういう仕事をするかどうかにかかっている。
 だから、編集経験がないとしても、徹底的に、手取り足取り教えるのだ。
 それで、早く一人前になってがんばってもらわなければならない。
 私の夢を実現に近づけるためにも!

 「じゃあ、まずは記事の企画を考えてもらえるかな。明日までに3つ」

 アラタちゃんはとても素直に仕事をがんばろうとしてくれている。その点、かつての私とはまったく違うタイプだ。
 でも、なんか、ちょっと気になることがある。
 会社の中で、しょっちゅうアクビしているような……。