そんな吉永さんの今の夢とは

 僕は大学進学を機に、静岡を出て東京にやってきました。

 大学生の時に、音楽と映像制作の活動をした後、インターネットで作品を発表することにしました。そして、自分の個人サイト「僕の見た秩序。」は、4年間で1億アクセスを突破するほどヒットしました。

 なかでも自分が力を入れたのは、キャラクターづくりです。

 キャラクターには、世界中の人に愛され、心を癒やす力があります。

 世界で印刷された本の発行部数を調べると、『聖書』などの宗教の聖典以外では、キャラクターに関連した本が上位に入ります。それだけキャラクターには、国境を越えて人びとに親しまれる力があるのです。

 しかも、キャラクターであれば、絵の才能がない自分でも作ることができる。絵画コンクールとは違い、下手な絵でも「味」として受け取ってもらえるのです。

 こうして、僕の夢は「世界中で自分の作ったキャラクターを見てもらう」ことになりました。

 僕が作品をつくる原動力となっているのは、「自分には才能がない」「でもここで終わりたくない」という絶望的な矛盾です。たいして才能のない自分が、とても実現しそうにない、荒唐無稽な夢を掲げ、それに引っ張られて努力している……。

 はたから見れば、訳のわからない人生かもしれません。

 でも、「自分には才能がない」ということに苦しめられている人は、かなり多いのではないでしょうか。「自分には才能がない」ということを実感するあまり、夢を手放してしまう人もいるでしょう。「自分には才能がない」ということと向き合うのが怖くて、自分の夢に気づかないふりをしたり、「そもそも夢なんて最初からなかった」などと言ってみたりする人もいるでしょう。

 今、目の前にある仕事が嫌で、会社を辞めたいと思っている人たちだって、初めから仕事を嫌っていたのではなく、「自分には才能がなかった……」と、どこかで挑戦を諦めてしまった人たちなのではないでしょうか?

 しかし「自分には才能がなかった」は人生の終わりではありません。ゲームオーバーからのコンティニューのように、ダメだったという自覚からこそ本当の勝負が始まるのです。

 たとえ「絶望」からのスタートでも、遠い先に夢を置くことができれば、それに向かって歩くことができる。夢を実現させるために、目の前にある仕事に全力を尽くす。目標になかなか近づけなくても、置いた夢を自分が消すことさえしなければきっと大丈夫。

 そんなことをわかってもらいたくて、書籍『言い訳ばかりの私を変えた夢みたいな夢の話』と、この連載を書きました。働き方に悩んでいる皆さんが少しでも勇気づけられたら、こんなにうれしいことはありません。

 次回から、やる気のないOL・ユミさんが主人公の「才能がない人の夢のかなえ方」の本編が始まります。「大ファンの声優に会いたい」という思いだけを持ったユミさんは、果たしてどこに辿り着くのでしょうか。

 お楽しみに。

*本編の第一回はこちら:お給料のためだけに働くOL、夢について考える

文・イラスト/吉永龍樹


こじらせOL、本気出す!
『言い訳ばかりの私を変えた夢みたいな夢の話』

何のために働いているのか、わからない。いっそ会社をやめようかな…。そんな悩みを抱えたやる気のない契約社員に「社内で一番の変人」の上司が火を付けた!ごく普通のOLの、心をゆさぶる物語。
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