ヤグチが1日中やっていたいこと

 

 「仕事の目標じゃなくて、人生の目標だよ。仕事の夢じゃなくて、自分の人生をかけて追いかけたい夢。そういうの、ないかな」
 「その……夢が、会社での仕事と何か関係があるんですか?」
 「そりゃあるよ」
 「そういうものでしょうか……」

 

 噛み合わない会話のままランチが終わり、会社の会議室へと場所を移してからも、夢の話は続いた。私はとんでもない部署に飛ばされてしまったのかもしれない……。
「私はこの部署で何をやればいいでしょうか」
「それを考えなくちゃね。だから、ヤグチさんの夢ってないかな?」
「それはさっきも言ったとおりです。普通、夢なんてないですよ……」
「じゃあ質問を変えよう。ヤグチさんは何が好きなのかな? もし、お金の心配をする必要がなくて、仕事をしなくていいとしたら、1日中ずっと何をしていたい?」
「えっ……」
「プライベートで好きなこととか、ずっとやっていても飽きないことは?」
「でも、今、仕事の話をしてるんですよね」
「うん。そうだけど、とりあえず仕事のことはおいといて」
「え……」
「何かあるでしょ」
「……占い、とか、けっこう好きかも……」
「おぉ、占いかー。いいね。どんなやつ?」
「うーん、タロット占い……とか。新宿でタロットのお店を出した友人がいて、そういう仕事ってうらやましいなと思って……」

 そう答えると、ちょっとうれしそうな顔をして、上司はこう言った。