「何のために働いているのかわからない」。そんなこじらせOLが主人公の小説『言い訳ばかりの私を変えた夢みたいな夢の話』を、本連載「才能がない人の夢のかなえ方」としてお送りしていきます。前回、憧れの声優・小田マモルのインタビューの約束が取れたヤグチでしたが……。
前回までのお話→ 前書き、第一回、第二回、第三回、第四回、第五回、第六回、第七回、第八回、第九回:自分のアイデアを通すには 相手が納得する提案の仕方
【第十回】気持ちは伝わる
「ネットの6秒動画サービスを使って、生の声をスマホユーザーに広げる」という企画が、事務所を辞めた小田さんの思惑と一致して、実現することになったのだ。
私にメールをくれたのは、事務所を辞めた彼のために新しくマネージャーをすることになった、彼の弟さんからだった。
そして、無事完成したそのインタビュー記事は、内容には賛否両論あったものの、爆発的なページビューを記録した。
何しろ、ほかに本人が登場したメディアがないのだ。
スポーツ新聞にも、「ネット動画で心情を激白!」という記事が載った。
もちろん、インタビューは今までの人生で一番緊張した。
普段は舞台で、しかもオペラグラス越しにしか見られないオダマモの口から出てくる言葉は、私の耳から耳に通り抜けるようだった。
自分がイスにちゃんと座っているという感触もなかった。
というか、今、思い出しても、インタビューをしていたときの記憶がほとんどない。
でも何より驚いたのは、オダマモ本人の口から、
「ほとんどのメディアは数字がほしいだけで、ゴシップ的な嫌らしさが強すぎたんですが、こちらの企画書は何か熱くて、僕の言いたいことをわかってくれかもしれないって思ったんです」
という言葉が出てきたときだった。
私のやたらと熱い企画書はムダではなかったのだ。
「どうやってインタビューしたのか、取材させてもらえませんか?」
今まであこがれていた大手のメディアからそんなオファーまできた。
でも、断った。
私のことを信頼してくれたオダマモに悪いと思ったから。
それでも、後追いの記事がたくさん出た。そして、そのたびに「関連記事」として紹介されたため、私の書いたインタビューのページビューは伸びていった。