季節の中にかすかに潜む次の季節の“きざし”

 福原義春さんの「季節を生きる」は、「二十四節気」を軸にしたエッセイ。二立春-雨水-啓蟄-春分とおよそ2週間ごとに変化していく自然に合わせて、丁寧に水彩画を描くように言葉を重ねていきます。

 「二十四節気」に関する本は、実はごまんとある。

 なのに、福原さんの言葉が響いてくるのは、彼が長く化粧品会社の社長を勤めていたことと関係があると思うのは、私だけでしょうか。

 極めて高度な技術で作られていく化粧品の世界。口紅の色ひとつの中に、医薬薬学から社会心理学までが溶けこんでいるかのよう。しかし、進歩すればするほど忘れてはいけないのが、女性もまたこの月の周期や大自然の動きの中で生きていることでしょう。

 例えば今、冬の一番寒い時期に、暦の上に春がくる。2月4日の「立春」です。その一日前が、季節の変わり目にあたる「節分」です。

 寒さに凍えている中に、次の季節が忍び込んでいる。

 ふと見ると、以前より日が長くなっている。毎日畳の目ひとつ分だけれど、確実に太陽の傾きも変わってきている。そうとなれば、少し明るい服を着たい、 次の季節のメイクをしようと思うのが自然です。

 福原さんは、「二十四節気」をじっと眺め、季節の中にかすかに潜む次の季節のきざしをつかんでいた。それが多くの女性を魅了する化粧品へとつながったのではないでしょうか。

 2週間ごとに進む「二十四節気」。

 そのひとつひとつに思いを馳せる福原義春さんの文章を読むことは、「人間本来の『生き物』としての生き方を少しでもとり戻す」(福原義春)ことにつながるように思うのです。

 季節は、立春へ。

 一足早く、春色をまとってでかけませんか。