竜馬が徹底的にモテる理由は……

 なぜもてるのかといえば、彼は「志(こころざし)」というマジックワードをもっています。「もう一度、日本を洗濯する」なんて言葉を吐き続けます。その高尚な志の実現のためならば、心も体も全部はり、志のためなら涙を呑んで身を引く女が多数でてくるのです。

 酒を呑んだ男同士の話が、呑み進むうちに会社のうわさ話から、まるで会社を自分が動かしているかのように変化していくのを皆さんも見たことがあるでしょう。

 そこに「志」を語ることで得られる竜馬的高揚感があるのです。

 「俺が志を語っているのだから、女は惚れて、助けるもの」

 こう勘違いした男が、年齢が上がれば上がるほど生息します。

 司馬遼太郎さんは、このモテモテ男は歴史上の「坂本龍馬」とは別のものとして、あえて「竜馬」と名前を変えました。この男に都合のいい物語は後に「課長島耕作」あたりにまで受け継がれ、日本男社会の精神をしっかりと支えています。