人生における“服”を身にまとう意味
こうした辛い時期の立ち直り方については、男女の違いや年齢差はほとんど関係ありません。古い自分から脱皮するコツを、齋藤さんは靴を通して教えてくれているのです。
齋藤薫さんの多くの著作の中でも、この一冊はどこか違う匂いがします。どの本も示唆に富み、読み終わると前向きな気持ちになるものばかり。しかしこの本には「悟り」に似たものを感じるのです。
それは12年も昔に書かれたエッセイを新書にしていることと無縁ではありません。齋藤さん自身がちょうど、「何を着ても似合わない」「着るものがない」と悩む時代に書かれているのです。
「おしゃれすることが幸せにつながらない」そんな負の感情を心に持ちながら書き進んでいます。
だから楽しく着飾るための服ではなく、なんとかして自分を取り戻す服、前へ進む一歩になるファッション論が展開されているのでしょう。
10年以上の月日を経て、齋藤薫さんはこの本を「不思議なことに書き直さなければならないところはあまりなかった」そうです。それだけ、その人が人生において服を纏(まと)う意味に肉迫している。私には立派な生き方の指南書に思えるのです。
この本を買い求めたら、ぜひあなたのパートナーにも読ませてあげてください。「彼との運命度はカジュアルの相性で決まる」「男も結局『頭のいい女』ガ好き」「一時間に一回、鏡を見ろ」など、男にとっても参考になる話が満載。
ふだん、何の気なしに見ているファッションの裏側に、停滞から抜け出そう、危機を切り抜けよう、立った岐路から一歩踏み出そうとする女性たちの思いが隠れていることをパートナーが知ることは、あなたにとっても悪い話でありません。
服で人生は変わる。変える転機を与えてくれるのがこの一冊です。
文/ひきたよしあき
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