落ちこんでいるときに元気がもらえたり、新しい視点が得られたり……ときには、人生が変わるほどの大きな力を持つ「本」。広告代理店のクリエイティブプロデューサーとして数多くの「人の心を動かす言葉」を生み出してきたひきたよしあきさんによる『あなたを変える「魔法の本棚」』連載では、読むたびに自分の個性や知性が磨かれ、人生が前向きに変わっていくことを実感できる“特別な1冊”を厳選して紹介していきます。

◆今回のことば

「空を見上げるというひとつの行為ではあるけれど、ひとつとして同じ雲はない」

――「『自分の言葉』をもつ人になる」より

「『自分の言葉』をもつ人になる」(吉元由美 サンマーク出版)

 作文技術の向上や論路構築のためのノウハウ本は、世の中にごまんとあります。しかし、「言葉の感性」を磨く方法が書かれた本は果たしてどれほどあるのでしょうか。少なくとも私は、この本をおいて一冊も知りません。

 「『自分の言葉』をもつ人になる」著者の吉元由美さんは、平原綾香の「Jupiter」をはじめ、30年間に1000曲に及ぶ作詞を手がけたヒットメーカーです。誰もが口ずさみたくなる詞の中に深く、印象に残る言葉をちりばめる天才が、その文章メソッドを「こんなに教えてしまっていいものか?」と思うほど語ってくれています。

 例えば、感性を磨く方法については、このような助言があります。

 「毎日空を見上げることです。この習慣を定着させるために、空や雲の写真を撮るのはどうでしょうか。」

 ただ当たり前に存在している空を「感動のスイッチ」を入れて見ると、見え方は違ってきます。「空を見上げるというひとつの行為ではあるけれど、ひとつとして同じ雲はない」と吉元さんは教えてくれます。

 私は、これだけで十分に買う価値のある本だと思いました。どんなにロジカルな文章を構築してもイマイチ心に響かないのは、空を見上げることを忘れているからではないでしょうか。「感じること」を大切にしていない文章は、人の頭を制圧できても心は奪えません。

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