落ちこんでいるときに元気がもらえたり、新しい視点が得られたり……ときには、人生が変わるほどの大きな力を持つ「本」。広告代理店のクリエイティブプロデューサーとして数多くの「人の心を動かす言葉」を生み出してきたひきたよしあきさんによる『あなたを変える「魔法の本棚」』連載では、読むたびに自分の個性や知性が磨かれ、人生が前向きに変わっていくことを実感できる“特別な1冊”を厳選して紹介していきます。

今回の芥川賞受賞作はおもしろい!

「コンビニ人間」(村田沙耶香 文藝春秋)

 芥川賞は、将来有望な新人小説家に与える賞です。作品の面白さよりもそこに、新しい言葉の実験があることが重要視されます。だから受賞作を読むと、大抵つまらない。何を言いたいのかよくわからない。文学愛好家には面白いのかもしれませんが、一般読者は途中で投げ出す人もしばしば。私のように評論家の選考評まで読むのは、十分なオタクです。

 そんな私が読んでみて、今回の受賞作『コンビニ人間』は、面白かった。難しい言葉づかいも妙な実験もなく、楽しんでいるうちに読み終えることができました。芥川賞なのに十分エンターティメント性をもっています。

 しかし、ただ面白いだけでなく、深く考えさせられるところもある。それもただ作品を振り返るだけでなく、自分の今の生活と重ね合わせ、見て見ぬふりをしていた部分に鏡を向けて本心を正視させられるような一面がありました。