落ちこんでいるときに元気がもらえたり、新しい視点が得られたり……ときには、人生が変わるほどの大きな力を持つ「本」。数多くの「人の心を動かす言葉」を生み出してきた博報堂クリエイティブプロデューサー・ひきたよしあきさんによる連載「あなたを変える、魔法の本棚」では、読むたびに自分の個性や知性が磨かれ、人生が前向きに変わっていくことを実感できる“特別な1冊”を厳選して紹介していきます。

◆今回のことば

「処女は、
 あなたの病気を治すことはできません」


――「くららと言葉」より

「くららと言葉」(知花くらら 著 講談社)
「くららと言葉」(知花くらら 著 講談社)

 処女は、あなたの病気を治すことはできません― 何のことだかわかりますか?

 ザンビアの道沿いに立っている立て看板に書かれている言葉だそうです。

 ザンビアでは、処女とセックスをすることでAIDSが治るという迷信が未だに信じられている。
 これによって幼い被害者がこの瞬間も増えているのです。

 この言葉を日本に持ち帰ったのはファッションモデルや国連WFP日本大使他様々な分野で活躍されている知花くららさん。

 世界中の災害、紛争、貧困地域を回り、そこで見て、聞いて、感じたことを書き記した「くららと言葉」は、本屋にずらりと並ぶ「心に残る言葉」の類いの切り貼り、コピペ本とは全く違います。

 それはまさに「つかみ取ってきた言葉」。

 スリランカの戦争未亡人、ザンビアのおばあちゃん、故郷沖縄の海人、友人、おかあさん、その他広範囲にわたる本の言葉を、くららさん自身が、鷲づかみにしてもってきた言葉なのです。だから、まだまだあったかくて、血なまぐさくもある。言葉がドクドクと生きている。つきつけられると、身をそらしてしまうようなものもあるのです。