知っておきたい女性ホルモンの影響

 女性ホルモンとは健康とキレイの守護神である美容サポートホルモンでありつつ、困ったこともあると善方さんは指摘。エストロゲンの分泌量上昇によって、子宮筋腫、子宮内膜症、乳がんなどの疾患や気分不安定、月経痛などが起きやすいかどうかにも関係しているのです。

 エストロゲンの減少でも、困った症状が起こります。エストロゲンが減少するのは、いわゆる更年期。肝臓などの代謝や骨が溶けない働きにもエストロゲンが関わっており、エストロゲンの減少は、脂質代謝異常、動脈硬化、心筋梗塞、骨粗しょう症などにも影響を与えているそうです。

 「更年期なんて先のこと、よってエストロゲン起因の病気についてはまだ心配ない」……なんて油断するのは禁物。「早発閉経」といい、更年期症状が40歳未満の場合に起きてしまうこともあるそうです。「月経周期が早まってきたり、月経量が極端に少なくなってきたりしたなどの症状が30代後半から出たならば、卵巣ホルモンのゆらぎが早く訪れてしまった『プレ更年期』かもしれません。気を付けてください」(善方さん)

女性ホルモンのコントロールを意識しよう

 女性ホルモンのコントロールのキーワードとなるのがイソフラボンです。体内で、エストロゲンと似たような働きをするとされており、エストロゲンの減少による諸症状を軽減することが期待されています。

 しかしながら、さまざまな臨床実験の結果、更年期症状に対する効果にはばらつきがありました。それは、腸内細菌の働きによって作られる「エクオール」という成分があるかどうかの違いだということが分かってきたそうです。エクオールは大豆イソフラボンに含まれるダイゼインという成分が腸内環境の力を借り、変換して生み出されたものですが、エクオールに変換できる腸内細菌がいないと、エクオールが作られません。そのため、更年期症状への効果もばらついてしまったのです。ちなみに、エクオールを作ることができる腸内細菌を持つ日本人は、約半数と言われているそうです。

聴講者で埋め尽くされた会場。女性ホルモンに対する意識の高さがうかがえました
聴講者で埋め尽くされた会場。女性ホルモンに対する意識の高さがうかがえました

 「女性ホルモンのような働きを期待して、イソフラボンを摂取しても、同じ効果を得られない人がいるということです。そこで、サプリメントでエクオールを摂取したり、エクオールを作れるかどうかの検査『ソイチェック』を受けてみるのもおすすめです」(善方さん)

 女性ホルモンによる体調の変化は、しかるべき方法でコントロールができます。「辛いときは我慢せずに、女性ヘルスケアの専門医に相談を。日本女性医学学会ホームページで相談先を見つけられます」と善方さん。早めの対処が大切です。

 善方さんは最後に、自分の女性ホルモンのライフステージを知り、ホルモンの変化に翻弄されず、上手にお付き合いすること。そのパートナーとして、婦人科を積極的に使ってほしいと締めくくっていました。

文/北本祐子 写真/竹井俊晴