12月2日、東京ミッドタウンにおいて、「ウーマン・エグゼクティブ・カウンシル」が開催された。企業の経営層に優秀な女性を数多く登用し、女性役員を増やす動きを社会的なムーブメントにすることを目的としたイベントだ。第一部は、内閣府男女共同参画局長の武川恵子さん、ダイバーシティ推進の先進企業カルビーの会長兼CEOの松本晃さん、アクセンチュア執行役員の堀江章子さんという立場の異なる三者による講演。第二部は、女性活躍を推進している企業各社の女性役員が登壇し、パネルディスカッションを展開した。このイベントの模様をダイジェストで紹介する。

2020年までに上場企業の役員に占める女性割合を10%に

 第一部の最初の講演者は、内閣府男女共同参画局長の武川恵子さん。「女性役員目標2020年10%に向けて」というテーマで、政府の目標と達成のための施策を語った。政府は、上場企業の役員に占める女性割合を2020年までに10%にするという目標を定めている。

 女性役員が在籍する上場企業の割合は、2013年の16%から、16年には30%に増加。しかしこの数字は、70%の上場企業で女性役員が一人もいないという現状を物語っている。

 「女性役員ゼロの企業が、少なくとも一人の女性を役員にすれば、10%の目標は達成できると思われます」と武川さんは話す。

内閣府男女共同参画局長の武川恵子さん「2020年までに上場企業の役員に占める女性割合を10%に」
内閣府男女共同参画局長の武川恵子さん「2020年までに上場企業の役員に占める女性割合を10%に」

 経済効果の観点から見ると、女性取締役のいる企業の方が、いない企業を比べて株式パフォーマンスが良いというデータがあり、特にリーマンショックによる落ち込みからの回復が早かったことがわかっている。

 政府では、女性役員を増やすための施策として、モデルプログラムを作成するために、この分野における先進的な諸外国の役員候補者向けの育成プログラムを調査研究。その結果をもとにして、我が国でも育成のモデルプログラムを作成し、来年度には試行のために各地の経営者協会や自治体に呼びかけ、実施、検証を行う予定だ。

 武川さんは、「単に知識を身に付けてもらうだけではなく、女性役員候補者の発掘機能を重視したい。具体的に、どの企業に何人の女性役員が在籍しているのか、見やすい形で社会に明らかにし、女性登用の気運の高めていく」と政府の指針を示して講演を終えた。

カルビーは女性役員を増やし、業績も右肩上がり

 次は、カルビー代表取締役会長兼CEOの松本晃さんが「Diversityは力づく-2030いちばん乗り-」というテーマで講演した。

 講演では、「ダイバーシティ、働き方改革を実行しないと、会社は絶対に成長しない」と松本さんは断言する。松本さんがカルビーに入社した約7年前には、同社には取締役は女性がおらず、執行役員の女性は1人だったが、現在では、取締役7人中2人、上級執行役員6人中1人、執行役員14人中5人が女性。それでも松本さんは、「革新のテンポが遅すぎる。早く実行すれば、結果はもっと早く出る」とスピードアップを目指す。

「ダイバーシティ、働き方改革を実行しないと、会社は絶対に成長しない」と断言するカルビー代表取締役会長兼CEOの松本晃さん
「ダイバーシティ、働き方改革を実行しないと、会社は絶対に成長しない」と断言するカルビー代表取締役会長兼CEOの松本晃さん

 松本さんの強いリーダーシップのもと、女性活躍を推進するカルビーは、なでしこ銘柄に3年連続で選出。取締役、上級執行役員、執行役員、管理職に占める女性の数は今年4月1日で22%。「今後、年3%ずつ増やすと19年には30%。『2030』に一番乗りする意気込みでやっています」(松本さん)。

 女性を登用すると問題が起こるという声もあるが、「既得権を持っている人は徹底的に抵抗するもの。この抵抗勢力に勝たないと改革は進まない。問題が起きたら、起きたときに考えればいい」と、松本さんはものともしない。松本さんの入社後、7年で売り上げは毎年10%成長、利益は毎年20%成長、ROEは10年程前の1.5%から約15%に上昇した。

 「スポーツの世界を見ても明らかなように、競争を伴うあらゆる場面でダイバーシティを実行しないと勝てない。会社が儲からなければ設備投資ができない。新商品の開発ができない。社員の給料やボーナスが増やせない、税金が払えない。社会貢献できない。そのため、カルビーにとってダイバーシティは『やめられない、とまらない』で徹底的にやっています」と、カルビーの代表的な商品のコピーに例えて、会場の笑いを誘いながら締めくくった。