「何のために働いているのか分からない」と感じたときは

――最後の質問です。日本には、日々忙しく働く中でふと「自分は何のために仕事をしているのだろう」と考え、悩んだり、心の病に侵されたりしてしまう人が大勢います。そのような人たちは、どんな末路をたどる運命にあるのでしょうか?

鈴木:私も普段は日経ビジネスの副編集長として、有益な情報を社会に提供することに使命を感じています。しかしアジアへ出張した時、路上生活障害者を見て「自分には何もできない」という無力感に襲われました。目の前の人を一人助けることもできない自分が、今の仕事を続けていく意味はあるのかと。

黒川:私も女優としてさまざまなお仕事をいただいていますが、「このままでいいのか」と不安になることがあります。ドラマ「○○な人の末路」の中でも、登場人物たちが今の仕事を続けていくべきか悩むシーンがありました。発展途上国で生きることに困窮する人を前にしたら、なおさらその思いは強まるのでしょうね。

鈴木:それがきっかけで書き始めたのが、「アジアの路上生活障害者の末路」です。複雑な気持ちを抱えて、新興国の闇を追い続けてきたノンフィクション作家の方のもとを訪れました。すると、すべての仕事はつながっていて、それぞれに意味があると言われたんです。

黒川:鈴木さんの仕事と私の仕事がつながっているということでしょうか?

鈴木:たとえ直接関係していなくても、最終的にはつながっているそうです。私の仕事と黒川さんの仕事は全く別のものですが、それぞれが一生懸命に仕事をすることで日本の経済は発展します。するとメーカーは海外に工場を作り、現地で雇用を生み出す。商社は現地で国際的競争力のある商品を見つけ出し、輸出増進に貢献する。間接的にではありますが、私たちの仕事はやがて新興国の経済活性化につながり、近代化した街に憧れを抱く路上生活障害者の希望になるとのことでした。

黒川:なるほど。目の前の状況にとらわれて、今の自分を否定する必要はないということですね。

鈴木:実は私自身、仕事でもプライベートでも日々多くの悩みを抱えていました。一家だんらんの楽しげなCMを見るたびに、今の自分を否定されているような気持ちになっていたんです。「子どもをつくらなかった人」や「友達ゼロの人」、「賃貸派」など、「末路本」で取り上げた人は、ほとんど私のことだから。でも23人の専門家に話を聞いて、気持ちが変わりました。自分はこのままでいいと思うことが大事なのだと気づいたんです。

黒川:ドラマの登場人物たちも、突然大金を手にしたり、田舎に移住してみたり、大小さまざまな経験をして悩みますが、進むべき道を自分で決めることで成長していきます。そんな姿を見ていると、私も「いろんな人生や生き方があっていいんだ」と思えるようになりました。

鈴木:ドラマ「○○な人の末路」も、書籍「宝くじで1億円当たった人の末路」も、さまざまな人の生き方を知ると同時に、自分の経験や人生を振り返るきっかけになると思います。働く女性の皆さんにとって、この2作品が「心のサプリ」になったらうれしいですね。

第1回 「意外な人」の「意外な末路」が響く…「末路本」解説
第2回 自分の末路を想像できる? 「末路本」で見えるもの
第3回 ドラマ化された「末路本」が心のサプリになる理由(この記事)

聞き手・文/華井由利奈 写真/小野さやか

日本テレビ 深夜ドラマ「シンドラ」第4弾「○○な人の末路」

月曜深夜24時59分スタート
主演:横尾渉、宮田俊哉、二階堂高嗣、千賀健永(Kis-My-Ft2)
紹介ページ http://www.ntv.co.jp/matsuro/

日経BP社 「宝くじで1億円当たった人の末路」

著者:鈴木信行
紹介ページ http://business.nikkeibp.co.jp/special/matsuro/

末路本ドラマ化記念イベント
大島てるさんと語る、「事故物件」から読み解くニッポンの末路


6/1(金)19:30~、天狼院書店「Esola池袋店」STYLE for Bizにて開催決定!
詳細は下記をご一読の上、ふるってお申し込みください。
お申し込み先 http://tenro-in.com/event/52053