現状を受け入れる他、道はない

 私の経験を振り返ってみると、これまでに何回か、「これはまずいな」と思ったピンチを乗り越えてきています。

 1回目は、ジャパネットたかたの創業前、私の生まれ故郷である長崎県平戸市で、両親と4人の兄弟でカメラ店を営んでいた頃の話です。突然、あるお客様から契約を打ち切られてしまったことがありました。そのお客様の取引額は当時の年商の約3分の1を占めていたので大きなダメージでした。

 そこで心機一転、次男坊である私が平戸から30kmほど離れた佐世保市に店を出すことになりました。佐世保市の人口は平戸市の約10倍。佐世保に行けば、これくらいのことは乗り越えられると思い、立ち向かっていったのです。むしろ逆境が奮い立たせてくれました。私が30歳の時でした。

 ところが、佐世保に拠点を移してからしばらくすると、別の危機が訪れました。またも大口の顧客との取引が突然なくなってしまったのです。

 当時、カメラ販売や写真の現像サービスの他、社員旅行に同行したり、温泉旅館の宴会に顔を出したりして、写真撮影を代行する仕事を手掛けていました。ある時、そうした記念撮影の仕事で懇意にしていた団体に何の前触れもなく切られてしまったのです。

 月商がやっと300万円に届いた頃で、その団体だけで毎月50万円くらい売り上げていましたから、それはもうショックでした。

 その団体とは5年ほどのお付き合いがありました。毎年正月三が日に記念撮影があり、妻と子ども3人を連れて行くのが恒例でした。契約解除の理由は値段だったのか、他の要因だったのかは分かりません。

 この時も、平戸のときと同じでした。平戸のときは佐世保に移った。では今回はどうするか。自分で変えられることは何かと考えました。

 私はこれを境にこの取引先を諦め、個人客中心に広く商売をしようと心に決めました。そうすべきだという気持ちがふつふつと湧いてきたのです。大口のお客様はもちろん大事です。ただ、それにも増して顔が見える一人ひとりのお客様を大事にすることの重要性をこの時強く感じたのです。

 「平戸じゃなければ商売できない」「あのお客様がいなければ利益が出ない」。そんな特定の考えに固執していたら、環境が変わったときに身動きができなくなります。

 外部環境に変化が起きたら、「自分ではどうすることもできない部分」は諦めて、「自分でどうにかできること」に集中するしかありません。

過去でもない未来でもない今を懸命に生きる

 現状を受け入れ、やれることには八方手を尽くして天命を待つ。それでも、どうにもならないこともあるかもしれませんが、一心不乱にやっていれば、最後は誰かが助けてくれる。私はそう信じています。

人生山あり、谷あり (C)PIXTA
人生山あり、谷あり (C)PIXTA

 人生にはうまくいかないときもあります。そのときは少し我慢しながら、過去でも未来でもない、今という時を一生懸命に生きればいい。それ以外に自分に降りかかってくる問題を解決する手立てはありません。今に200%、300%のエネルギーを注ぐのです。そうすれば明日が変わり、明日が変われば1年後も変わります。