今の自分を完成形だと思ったとき、成長は止まる

 時分の花をまことの花と錯覚して慢心し、消えていく若者がいかに多いことか。時分の花をまことの花と勘違いしてしまうのは、自分を高めようという意欲に欠けるからでしょう。今の自分を完成形だと思ったとき、成長は止まります。

 例えば、テレビ通販のMC(語り手)ならどうでしょう。ジャパネットたかたの成長とともにMCの数も増えました。今では十数人のMCがいます。

 MCの一人がある商品を紹介して、何千個と売れたとします。商品が売れる、売れないには、もちろん語り手であるMCの力が大きく作用するものの、それ以外にも商品の力や季節指数、価格などいろいろな要素が関係しています。

 本当は商品力や、多少なりともジャパネットというブランドがあるから売れているにもかかわらず、「すべては自分の力で売れた」と勘違いする人は伸びるのが遅い。できていなかった部分を改めることを怠ってしまうからです。今の自分が完成形だと思ったら、成長は止まってしまいます。

 例えば、テレビ通販番組で5分間、商品の紹介をしたとします。たとえ同じ商品について話したとしても、MCが違えば全く違う内容になる。仮に5分間の話に100の構成要素があったとしたら、100の違いが生じるのです。

 MCはこの100の違いに気が付いて、自分を変えない限り、名人の域に達することはできません。

 改善点はいくらでも見つかります。例えば、こんなことがあります。

 50インチのテレビを紹介したときに、もう少し商品を大きく感じてもらえるカメラの距離感と背景があったのではないか。余計なことを話している時間が7秒あった。その分、「分割で買っていただいても、金利は全部負担します」ともう一言あれば、注文は2、3割増えたのではないか、といったことです。

 こうした細かな点に気付いて、修正していくことができなければ、一流には近づけません。

 断言できるのは、「そこまでできるようになりたい」という強い意志がある人でないと、たとえ何百、何千と回数を重ねても、周囲が指摘したとしても、うまくならないということです。

 時分の花とまことの花の違いをしっかり分かっている人は、どんどん成長していきます。こういう人は商品が売れたときでも慢心せずに、「もっと売り上げを伸ばすためにはどうしたらいいか」「この部分の語りが足りなかった。どんな言葉で伝えればよかったのか」と研究を惜しまない。常にそんなふうに努力を続けている人は、次も必ずすごい実績を残します。

昨日の自分より今日の自分

 「夢持ち続け日々精進」。何か言葉を書いてほしいと頼まれたとき、私はよくこの言葉を書かせてもらいます。

 この言葉通り、私はどんなときも夢を追いかけ、昨日より今日、今日より明日というように、日々少しずつでも自分を成長させようと励んできた気がします。

昨日より今日、今日より明日! (C)PIXTA
昨日より今日、今日より明日! (C)PIXTA

 どんなステージにあっても、「昨日の自分」を超えていく。こうした心の持ち方のことを「自己更新」といいます。仕事でもプライベートでも、それを常に心に留めておけば、誰だって自分の中に成長の余地を見いだせます。

 常にライバルは自分自身。他人と比べるのではなく、自分史上最高を目指すのです。自分自身の中に課題を見つけ、修正する。それが達成できたら、次の課題が出てくるのでまた取り組む。

 それを続けていくと、徐々に自分の目標に近づいていくし、ただただ自分でやり続ければいいだけなので、誰かと自分を比較する必要がなく、優越感や劣等感を持つ必要がありません。