その症状とワクチンの因果関係が証明できるのか
 その症状の発生頻度はワクチン未接種者と比べてどうなのか

 まず一つ目の結論を言うと、ワクチンが症状を引き起こしているという客観的な証拠は、今のところありません。採血上も画像検査上も、明らかな異常が認められていないのです。

 そうなると、あとは副反応が起きたタイミングが重要になりますが、接種後数カ月から1年以上経過して起きた症状でも副反応とされているケースがあり、診断として妥当なのか、検証の余地があるように思います。

 しかし副反応を強く疑う人たちが言うように、「関係がないことも証明できない」というのも確かにその通りです。

 では、それは判定保留として、二つ目の疑問に進みます。

 いくら身体症状症の可能性があるといっても、ワクチン未接種者よりも接種者に症状が圧倒的に多ければ、因果関係が強く疑われます。

 その検証のために、名古屋市は市内に住民票のある若年女性約7万人を対象に、アンケート調査を独自に行いました。副反応と疑われる24種類の症状の発現頻度を、接種グループと未接種グループに分けて比較検討したのです。

 このアンケート調査は、対象人数も多い上にアンケートの回収率も高く、統計解析を名古屋市立大学の専門家が行っており、信頼性は相当高いものでした。

 その結果、それぞれの症状の発生頻度は両グループ間で統計的に差がないことが判明したのです。つまり未接種のグループにも、同様の症状を起こす女性が同じぐらいいたのです。

 「え、そうなの」と思った人も多いと思いますが、結論は急がず、話を進めていきます。

 厚生労働省はワクチン接種後の副反応について、「接種との因果関係を問わず報告を収集」していて、まれに重い副反応の報告もあるとして、次のような疾患と発症頻度をホームページ上にあげています。

・アナフィラキシー(重いアレルギー反応)が約96万接種に1回

・ギラン・バレー症候群(手足の脱力などの末梢神経障害)が約430万接種に1回

・急性散在性脳脊髄炎(頭痛、嘔吐、意識の低下などを症状とする脳などの神経の病気)が約430万接種に1回

・複合性局所疼痛症候群(外傷をきっかけとして慢性の痛みを生ずる原因不明の病気)が約860万接種に1回

 いずれも症状の重い疾患であることは間違いありませんが、頻度はかなりまれであることが分かります。またギラン・バレー症候群と複合性局所疼痛症候群に関しては、WHOはいくつかの大規模な研究の結果を受けて、HPVワクチンの接種によって発症が増えたというエビデンスはないと判定しています。

 こうした結果から、皆さんは何を感じたでしょうか。