多くの人は、「HPVワクチンはかなり安全だな」という印象を持ったのではないでしょうか。私もそう思っています。

 しかし、私がここで強調したいことは、「HPVワクチンが安全だ」ということではありません。重い副反応のうち、急性散在性脳脊髄炎の可能性については、WHOも言及しておらず、判定保留にしていると考えます。

 アナフィラキシーは原則的にどんな薬でも起こり得ることです。薬ではなくても、そば、ピーナッツ、スズメバチなどによるアナフィラキシーで亡くなったという報告は、時々目にします。HPVワクチンで同様のことが起こってもおかしくありません。

 報告されている諸症状は、身体症状症で説明できるかもしれませんが、HPVワクチンがきっかけとなった可能性はあります。つまりワクチンが体内で化学的な反応を起こしたというわけではなくても、HPVワクチンを接種するという行為そのものが、不安定な思春期の少女に、性に対する不安や病気に対する恐怖心、そして場合によっては自分が侮辱されたような感情を引き起こし、身体症状症を誘発したのかもしれない、ということです。真相がどこにあろうとも、実際にHPVワクチンの問題で今も苦しんでいる人がいるのは確かです。その事実はきちんと直視するべきでしょう。

HPVワクチンの副反応と子宮頸がんの罹患率

 私は「HPVワクチンは安全ですよ」と喧伝(けんでん)するつもりは一切ありません。重い副反応が起きる可能性を否定することもできません。

 ただ一つ言えるのは、「起きるかもしれないけど、その確率は著しく低い」ということです。現実的に一番問題になり得るのはアナフィラキシーだと私は思いますが、それでも96万接種に1回と、極めてまれです。

 一方で、子宮頸がんは、年間約1万人が新たに発症し、2016年は2710人が亡くなっています。「がん情報サービス」によれば、1人の女性が生涯で子宮頸がんに罹患するリスクは約1%、死亡するリスクは約0・3%と報告されています。決して少ない数字ではありません。

 このリスクを、ワクチンによってグッと下げることができるのです。

 つまり私が強調したいのは、HPVのワクチン問題は、二つのリスクをてんびんに掛けて、どちらを取るか決める問題なのではないかということです。