課題は「賃金」の低さだが……

 そんななか、大きな課題の一つは「復職後の賃金」だろう。女性雇用者の増加分を年収別に見ていくと、ボリュームゾーンはやはり年収100万円から149万円。年収100万円未満で働く女性も、50万人以上増えている。数字を見る限り、主婦が働き出したといっても、現状では「夫の扶養の範囲内で」という従来のイメージを覆すまでには至っていない。

 ただし、変化の兆しはある。過去数年間、同様の統計を眺めてきた大嶋さんによれば、近年、非正規雇用者で働く女性のなかで年収200万円以上の人が増えているからだ。

 加えて、こんなデータもある。

 大嶋さんが所属するリクルートワークス研究所では、全国4万人を対象に、毎年、その就業実態を追跡調査している。一番下の子が17歳以下で、過去に会社を退職した経験を持つ非正規雇用の女性が翌年にどのような働き方をしているのかを見てみると、年収200万円以上の場合、非正規雇用全体では14.2%、パート・アルバイトに限定しても8.6%が正社員に移行していた。

年収200万円以上の場合、正規社員へ移行した人の割合が高くなる(※)末子17歳未満の退職経験のある女性で2015年12月に正社員以外の雇用者だった人のうち、2016年12月に正社員であった人の割合(%)/リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」(2016年、2017年)より作成
年収200万円以上の場合、正規社員へ移行した人の割合が高くなる(※)末子17歳未満の退職経験のある女性で2015年12月に正社員以外の雇用者だった人のうち、2016年12月に正社員であった人の割合(%)/リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」(2016年、2017年)より作成

 総合すると、主婦の復職を巡っては非正規かつ扶養の範囲内で働く女性が相変わらず大きなボリュームを占めているものの、その一部は短期間で正社員となり、年収200万円以上を獲得しながらキャリア再開発を実現していることが各種のデータからは読み取れる。

 大嶋さんによると、育児期の女性で非正規雇用から正規雇用に転換している人がより多いのは、年収200万円以上のほかに、「非正規雇用時代に自己啓発をしていた人、単調でなくさまざまな業務(仕事)をしていた人」だという。

 主婦が復職してキャリア再開発をしていくプロセスは、「働いている」「働いていない」の二元論ではなかなかつかみきれないものがあるようだ。