「ゼロ」に戻れる柔軟さが成否のカギを握る

 「当事者にインタビューすると、その間、単発のアルバイトや時短労働、仕事に必要な知識・スキルを学ぶなど小さなステップをいくつも踏み、自分に何ができるのか、何がしたいのかを内省するサイクルを回しています。

キャリア再開発ができる人は、自分がどう働きたいのかを探しながら、小さな経験を積み上げている/大嶋さん作成
キャリア再開発ができる人は、自分がどう働きたいのかを探しながら、小さな経験を積み上げている/大嶋さん作成

 担当業務の幅を広げたり、働く時間を増やすなどの挑戦を繰り返したりしながら、自分がどう働きたいのかをつかみ、機会が来たら積極的につかみに行く人が、結果的にキャリア再開発ができている」(大嶋さん)

 離職後、長いブランクを経て再就職する場合、新卒で働き始めた時にはなかった業務や職業にも遭遇する可能性が高い。希望する職種と労働市場とのニーズが合わず期待値調整がうまくいかないと、せっかくのチャンスを逃してしまうこともある。

 再就職を始めるまでの心理的な壁、プロセスが見えない壁、期待値調整がうまくいかない壁など、いくつもの壁が立ちはだかるなか、自分一人でそれらを乗り越えるのは不安も大きい。再就職を希望する主婦を「ワークアゲイン人材」と位置付け、壁を乗り越える支援をしているのがWarisワークアゲイン事業統括の小崎亜依子さんだ。

 Warisではこの7月から、経済産業省委託事業「未来の教室」実証事業の一部として「女性復職支援事業」を受託し、復職に必要なプログラムの開発にも取り組んでいる。

 実証事業では、今後人材ニーズが高まると予想される、中小やベンチャーなどの「バックオフィス」「ホテル」、人間が手作業で行ってきた定型業務を自動化する「RPA(Robotic Process Automation=ロボティック・プロセス・オートメーション)」の3つの業務に的を絞り、来年1月までの約半年間、合計70人を対象に学び直しの講座を開催し、企業の面接を経た上での有償インターンシップと計4回に渡るキャリアカウンセリングなど実施しながら、実際、何が復職の役に立ったのか、事業化を進める上での課題などを検証していく。

 「40代半ばでも20代の若者に『教えてください』と言えるような人は職場でも受け入れられやすく、その後もリーダー職に昇格している。新たな知識・スキルを獲得し、自ら学ぶ姿勢をつくること(ラーニング)ができる人、過去の成功体験やモデルを捨てて、ゼロから学ぶこと(アンラーニング)ができる人は、どこでも活躍できます」と小崎さん。

 時間とお金をかければ、知識やスキルを習得することは可能だ。難しいのは過去の成功体験を捨て、まっさらな状態で仕事に取り組む「アンラーニング」のほうかもしれない。プライドを捨てて「ゼロ」に戻れる柔軟さがあることが、キャリア再開発のカギを握っていると言えそうだ。

文/曲沼美恵 写真/PIXTA