「20代新人」にだけ許される「質問」
新人が会議に参加するための秘訣は、こうだ。「発言」ではなく、特権を生かした「質問」から入る。会議で、参加者をうならせる「発言」ができれば大したものだが、経験が浅い新人には、はっきり言って無理だ。
肩に力が入った「発言」は、当面、封印してもいいだろう。代わりに、自分たちにだけ許された特権を生かして「質問」をしていこう。それだけで、十分に会議に参加したことになる。その特権とは、見当違いな質問でも許されるというものだ。
「まだ、うちに入って日が浅いからね」「社会人になったばかりだからね」と周囲も大目に見てくれる。とはいえ、実はこの質問力で徐々に差が出てくる。
その差とは、「50代部長」を考えさせ、うならせる質問をできるかどうかだ。「50代部長」から「彼は毎回、いい質問するね」とか「あの質問はこちらが考えさせられたよ」という感想を引き出すことができれば、大成功だ。
では、どうすれば「50代部長」をうならせる質問ができるのか。2つのステップで紹介しよう。
【ステップ1 チャンスを逃さず、質問をする】
まず、臆せず質問することが大前提だ。そして、大事なのはタイミングだ。会議には「流れ」や「空気」があるので、適切なところを見計らおう。そのタイミングはどこか。
会議では要所の区切りか最後に、必ず「何か質問はありませんか」と議長が聞くことがある。
ここだ。まず、ここのチャンスを絶対に逃さないようにしよう。
「何か質問は?」は、「絶対に質問せよ!」のサインだと覚えておこう。
新人が質問をするメリットは2つある。
メリット2:(質問することで)相手に好印象を与えられる
「質問」をするのは当たり前のことだろうか。いや、それが当たり前ではないのだ。例えば筆者は大学の授業を含めて、年間数百回の講座をする中で、よく質問を募る。その質問の数や質で、参加者の理解度や関心度合いを測るが、いい質問をする参加者には、強い好印象が残る。
そう、「質問」はアピールの場でもある。
だがこの法則は、若い人にはあまり知られていない。
例えば、就職活動を控えた大学3年生向けの講義で質問を募ると、全く手が挙がらない。アピール力を磨かなければいけない大学3年生の反射神経には、「質問をすること」が刷り込まれていないのだ。
「質問サインが出たら、なにがなんでも絶対に手を挙げなさい。そうしないと出遅れるよ!」と大声で伝える。そうすると次回の講義から、ぼちぼち質問が出るようになる。こういうことは、意外と教わらずに入社してくるため、ビジネスシーンで差が付きやすいのだ。
【ステップ2 何かを比較して質問する】
ようやく「質問」のチャンスが来たら、直感に従って何でも質問しよう。
素朴な疑問でも何でもいい。例えば、常識を問う質問などは入りやすい。どの会社でも「会社の常識は、世間の非常識」というところがある。
「50代部長」は、会社に近く、世間から離れてしまっている。「20代新人」は会社から遠く、世間に近い。これを利用するのだ。
「自分の常識」から、「会社の非常識」を問う質問は、新人だからこそできる。例えば、「なぜ我が社は、製品の価格をもっと安くして多くの顧客に買ってもらえるようにしないのですか」などは、ハッとさせられる質問だ。こうして「質問」に慣れたら、徐々に「質」を上げていこう。
では、どんな風に質を上げるのか。論点(問い)のつかまえ方を参考にしよう。
これが公式だ。
素朴な疑問がかわいいと思ってもらえる特権も、数カ月で失効する。次は「2つを比較」して、「何が」「なぜ」「どうしたら」と、デキる質問をつくってみよう。
2つを比較
「50代部長」は常に何かを比較して悩んでいる。大体、この2つだ。
「理想の目標」vs「現状の実績」
「優位な競合他社」vs「劣後している自社」
これらのギャップをどう埋めるのかを常に考えている。
何が? なぜ? どうしたら?
このギャップを埋めるための質問フレーズには、What(何が)、Why(なぜ)、How(どうしたら)がある。
Why(なぜ):なぜ、こんなに差があるのでしょうか
How(どうしたら):どうしたら差を埋められるのでしょうか
2つを比較することで、「50代部長」の悩みや立場を想定できる。そこに、何が、なぜ、どうしたら、と問うのだ。そうすると、会社が抱える大きな問題を理解することができるし、部長をうならせて自己アピールすることもできる。
もう少し具体例を見てみよう。