退職の理由を素直に告げる必要はない

 なお、キャリアアドバイスをする人の中には、冒頭で述べたように「人間関係で行き詰まって仕事を辞めた」という人に対してネガティブなイメージを抱く人もいます。

 私は、転職時にわざわざそのことを正直に言う必要もないと思っています。

 しっかり休んで、第1段階に回復しているのであれば、もう以前のあなたのように、少しの人間関係トラブルで傷つくことはありません。「休んでいた期間が長いですね」といわれるかもしれないと思ったら、自分なりの言い訳をつくっておけばよいのです。

 私は、クライアントがうつ状態から復活し、新たな職を探そうとするときには、「よかったですね。次の仕事を見つけるときには、普通の就職の面接のように、『やる気があります』とアピールしてもいいのです。うつのときの気力のなさや集中力のなさは、一過性のものでもう治っています。それをわざわざ打ち明ける必要はないのですよ」とお伝えします。

 疲れてうつになって休職をし、同じ職場に復職したときに「あの人、ちょっとお休みしたんだよね」という目で見られることを気にする人もいます。それも、「周囲から弱いと思われたくない。攻撃されたくない」という自衛本能のためで、当たり前の感情です。

 復職する人を受け入れる立場の人にも、ぜひ、人間の疲労や感情のメカニズムを知っていただきたいと思います。正しく理解していれば、「頑張って疲れたから、うつになってしまったんだ。別にその人の機能が悪いわけではない。これからは、そうならないように早めにケアしていけばいい」という捉え方ができるはずです。

 仕事を頑張っている人すべてがこの疲労や感情のメカニズムを正しく知ることによって、「人間は決して完全ではないし、弱ったり別人のようになってしまうこともある生き物なんだ」と自分にも他者にも寛容になることができる。そして、疲れ果ててしまう前に早めにリカバリーできる社会になっていく、と私は信じています。

文/柳本 操 写真/PIXTA