もちろん桜もち以外にも、桜の和菓子は多数。花の美しさを繊細に表現する飴菓子や、桜がある風景をまるごと描き出すような棹菓子など、この季節ならではのお菓子が種類豊富につくられています。

■紫野源水(むらさきのげんすい)
「桜の有平糖」 1箱 1188円(税込)

 ガラス工芸のように華奢で麗しく、見る人をもれなく感嘆させる飴細工です。桜の花と葉をかたどった飴は厚さ1mmほどと薄く透き通っていて、向こう側が透けて見えるほど。丁寧に扱わなければすぐに壊れてしまうような繊細さも、桜の花のイメージと重なります。熟練した手作業で一つひとつ丁寧につくり出されるやさしい甘さの飴は、この季節ならではの逸品です。

【和菓子店について】

 風雅な和菓子をつくり続ける老舗。銘菓として知られる「松の翠」は、大納言小豆を羊羹に載せ、すり蜜(砂糖を再結晶化させたクリーム状の白い蜜)をかけたもの。松の幹を表現したこのお菓子のファンは多く、季節の生菓子は定評があります。

【DATA】
紫野源水
住所:京都府京都市北区小山西大野町78-1
TEL:075-451-8857

■落雁諸江屋(もろえや)
「春は櫻」 1折 1944円(税込)

 黒い箱の蓋を開けると、桜の花と葉、そしてその中を飛ぶ蝶が出現。鮮やかなピンク色の桜と黄色い蝶は口溶けのよい落雁、薄緑色の葉は甘みと辛みを味わえる生姜砂糖を内包した抹茶最中です。対角線の仕切りが生きるレイアウトや、『枕草子』冒頭の「春はあけぼの」を思わせる雅やかなネーミングも秀逸で、奥行きのある和の世界観を楽しませてくれます。

【和菓子店について】

 江戸時代、京都で修業を積んだ初代が故郷である金沢に戻って創業したのがはじまり。昔ながらの製法を守り、金沢の風土に合った菓子づくりを続ける落雁の名店です。「花うさぎ」をはじめとする落雁はもちろん、「塩どら焼」「福徳せんべい」など多彩な和菓子を手掛けています。

【DATA】
落雁諸江屋
URL:http://moroeya.co.jp/
住所:石川県金沢市野町1-3-59
TEL:076-245-2854
ネットショップ:http://moroeya.net/

■桂月堂(けいげつどう)
「桜だより」 1個 216円(税込)

 白くてモチモチとやわらかい生地は外郎(米粉などの穀粉に砂糖と水を練り合わせて蒸したもの)。薄く伸ばして花びら形に型抜きされ、桜の花をあしらうことで愛らしく仕上げられています。二つ折りの花びらからほんのりと透けて見えるのは、薄紅色の餡。桜の葉の塩漬けが練り込まれており、口にすると瞬時に春の香りが広がります。餡の甘さと桜の葉の塩味を、やわらかな餅とともに堪能できる生菓子です。

【和菓子店について】

 松江藩七代目藩主・松平不昧公がお茶会で用いたお菓子を復元したと言われる「若草」をはじめ、お茶席を引き立てる銘菓が揃っています。大納言小豆を丹念に炊き上げ、錦玉(寒天に砂糖や水飴を加えて煮詰め、固めたもの)を流し込んで乾燥させた「薄小倉」はシャリシャリ食感が好評。

【DATA】
桂月堂
URL:http://www.keigetsudo.jp/
住所:島根県松江市天神町97
TEL:0852-21-2622
オンラインショップ:http://www.keigetsudo.jp/?mode=cate&cbid=1392279&csid=0

■二條若狭屋(にじょうわかさや)
「春の宴」 1棹 1296円(税込)

 花見の宴に興じていると、池や川の水面に花びらが舞い散っていた――そんな春ならではの風流なワンシーンを思わせる棹菓子です。透明な錦玉の中に、桜の花びらや葉に見立てた淡い色合いの錦玉を浮き沈みさせつつ配置。土台となる栗羊羹とみじん羹(錦玉に米粉を加えたもの)とのコントラストも美しく、上品な甘さが広がるおもてなしもおすすめの銘品です。

【和菓子店について】

 焼き芋に見立てた薯蕷まんじゅう「家喜芋(やきいも)」、お湯を注ぐと葛湯ができあがる「不老泉(ふろうせん)」などの銘菓で知られる京菓子店。喫茶スペースがある寺町店では、甘酒やべっこう飴といった和風シロップで味わうユニークなかき氷が話題を呼んでいます。

【DATA】
二條若狭屋
URL:http://www.kyogashi.info/
住所:京都府京都市中京区二条通小川東入西大黒町333-2
TEL:075-231-0616
FAX:075-252-2020

文/西門和美 写真/畑主税