――「ワカタク」が目指す“新たなスタンダード”となり得るのは、どのような和菓子だと思われますか? やはり、「洋」の素材を取り入れたものでしょうか。

 そうですね。「洋」の素材も、その一つですよね。ただ、洋の素材を使ったから「新しい」という短絡的なことではありません。洋の素材を使う際に問われるのは「食材をいかに理解して生かせているか」ということ。従来の和菓子をベースにして、単に生クリームを載せたりチョコレートを挟んだりするだけでは、安易な「洋菓子っぽい和菓子」になるだけです。「あえて洋の素材を使ってみよう」と奇をてらうのではなく、素材の魅力をいかに細やかに捉え、余すことなく生かせるかが重要だと思います。

 30年前に当時30代だった若主人たちが生み出した「いちご大福」は、最初は「異質な和菓子」として敬遠されましたが、同世代の顧客に受け入れられて定着したというケースもあります。ワカタクが作る和菓子の中からも、未来の「定番」が生まれてくるのではないかと期待しています。

 たとえば、山形県の「佐藤屋」さんで作られている「たまゆら」という生チョコは良い例です。バターを使わず、白あんと寒天を使って独自に製造し、新たなチョコレート菓子を生み出して、発売2年目となる昨年のバレンタインに大ブレイクしました。この商品も「新たな和菓子のスタンダード」ではないかと思います。

※写真は、畑さんのブログ「和菓子魂!」より。
※写真は、畑さんのブログ「和菓子魂!」より。

――「ワカタク」のイベントでも「佐藤屋」さんの人気は高く、オリジナルTシャツを着た女性たちが会場を訪れるほどだと伺いました。

 新宿高島屋で行ったイベントは、地下の階で行ったので、偶然その近くを通られたお客様の目に止まりやすかったということもありますが、9人のワカタクが実演したり、互いの菓子をイキイキとした表情で販売していかにも楽しく見えて、お客様を呼ぶ好機となりました。通りすがりの女性たちがたまたま、「おもしろそう」と立ち寄ってくださったんです。

 そこで体感した佐藤屋さんの和菓子のすばらしさ、8代目職人である佐藤慎太郎さんの人柄と楽しいトークに惹かれて、ファンになったという女性も多いのではないでしょうか。和菓子を好きになる入り口は、思いがけないところにあるものです。きっかけはどうあれ、そうして和菓子に興味を持つようになりお店のオリジナルTシャツでイベントに参加するなんて、ものすごくアツい。和菓子の世界にはそれほどに、女性の心に響く要素があるということですよね。

2015年9月に新宿タカシマヤで開催されたワカタク催事の様子。畑さん(右上端)と和菓子の未来を担うワカタクたち。
2015年9月に新宿タカシマヤで開催されたワカタク催事の様子。畑さん(右上端)と和菓子の未来を担うワカタクたち。