働き続けるために必要なチカラは「保育力」と「想像力」

300人収容の会場は立見が出るほどの盛況ぶり
300人収容の会場は立見が出るほどの盛況ぶり

 一方、武器となる一つ目は「保育力」だといいます。

 「私も『いつでも辞めてやる』と後ろ向きな時期がありましたが、その時に『本当にそれでいいの?』と自問したり、『これが悪かったんじゃない?』と自分の言い訳を批判したり、『明日はできるんじゃない?』と励ましたり。自分で自分をひたすらあやし、保育し続けてきました」

 仕事は辞めることより、続ける方が気力を必要とするもの。安藤さんはこの「保育力」があったからこそ、男性中心の職場で仕事を続けられてきたと振り返ります。

 また二つ目の武器は「想像力」だといいます。

 「このチカラがあるからこそ、私の場合は東京のスタジオに身を置きながら、遠く離れた地で起こったテロといったニュースを、自分の言葉として伝えることができる。想像力とはその先にあるものに思いを馳せる能力で、それはどんな職場でも必要とされるはずです」

 あるときサンドイッチ購入のお遣いを頼まれた際に「喉も渇くだろう」と飲み物も買ってほめられたことがあるそうですが、仕事の根幹も同じなのといいます。そして想像力を発揮するためには、「肉体的・精神的にいっぱいにならないように気をつける必要がある」と安藤さんは注意を促します。

 「20代30代ではまだ精神をフラットにすることは難しく、私も100%仕事に集中するために自分の感情の蛇口を自在に調整できるようになったのは40代になってから。皆さんも今できなくても、焦る必要はありません」

 安藤さんは落とし穴も武器も、仕事で世間にもまれ人とのつながりの中で身に付けたと語ります。特に市井の人々の地に足をつけた暮らしぶりや思いやりに触れ、改善・成長してきたそう。「母から『優子は世間が育ててくれた』と言われていましたが、人とのつながりは財産だと思います」と締めくくる安藤さん。厳しい報道の現場で第一線に立ち続けたからこその深い言葉に納得した人も多かったようです。