こうした動きの背景には、皮膚疾患と皮膚常在菌の研究の進歩がある。「アトピー性皮膚炎患者の8割以上は黄色ブドウ球菌を保持する」と出来尾講師。慶應義塾大学医学部の海老原全准教授は「動物実験から、遺伝的に皮膚増殖因子が欠損していると黄色ブドウ球菌が極端に増えてアトピー性皮膚炎を引き起こすケースがあると分かった。消毒液の次亜塩素酸を用いて黄色ブドウ球菌の異常増殖を抑え、アトピー性皮膚炎の悪化を防ぐ試験を行っている」と説明する。
ニキビでは、「皮脂分泌が盛んになる頃にニキビにならないタイプのアクネ菌を植え付けてニキビを防ぐ研究も始まっている」と出来尾講師は話す。
ただし肌に関わる菌種は多く、特定菌種を増やしても無意味との指摘もある。
表皮ブドウ球菌は角質にすむため、角質を落とし過ぎることが減らす原因にな る。肌をアルカリ性に導く汗や、殺菌効果がある物質もNG。
・長時間の入浴や半身浴、岩盤浴
・ピーリングやアカスリ、スクラブ、シェービングの多用
・顔の洗い過ぎ、洗浄料の使い過ぎ
・防腐剤や殺菌成分を多く含む化粧品類の使用
・レーザーを使った美容医療(波長による)
講師
出来尾 格
慶應義塾大学医学部卒業。アトピー性皮膚炎や皮膚常在菌を研究する。「石けん洗顔で皮膚常在菌は減るが、12時間ほどで回復すると考えられる。回数が多いと回復できない」。
准教授
海老原 全
慶應義塾大学医学部卒業。皮膚アレルギーやアトピー性皮膚炎などについて研究する。「現時点では黄色ブドウ球菌の静菌による治療を研究している。ニキビの対策にもなるだろう」。
文/宇野麻由子
日経ヘルス 2015年10月号掲載記事を転載
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