深澤:たしかに私も以前は「どこかに所属しよう」としてたけど、オンチだから、所属すること自体だったり、そこでの地位が目的になってしまって結局うまくいかなくなるから、今は所属しないようにしているかもしれない。

古市:属する場所も作りたくないし、地位も作りたくない。それはそれで大変そうですけどね。

深澤:「所属する」ってことは、守りたいものや隠したいことがあるっていう面もあるけど、私は今はもうそれもあまりないのかもしれない。

古市:僕は深澤さんよりはあるかなー。秘密くらいはある。

深澤:あなたに秘密なんてある?

古市:なんだろ……。些細なことかな。

深澤:些細なことじゃん!(笑)

古市:だって価値がある秘密ってことは、一定程度は世の中にありふれた秘密ってことでしょ。逆に、本当にごく個人的な秘密っていうのは、世の中に理解もされないから、隠す意味もあまりない。

深澤:ああ、それはそうだわ。

古市:そもそも、秘密を守るとかめんどうくさいしね。やっぱり省エネを追求した結果、こうなっちゃったのかな。

深澤:だから、「やりたいことをやってる」んじゃなくて、「やりたくないことをやらないこと」にかける労力は、私たちはすごいと思う。

古市:そうそうそう! やりたくないことはやんない。

深澤:苦手なものを克服できないのが、オンチなのかもしれない。でも克服するんじゃなくて、「できないことを認める」ことも悪くないと思う。

日経ウーマンオンラインで人気を博した連載「女オンチ人生」が1冊の本になります!
 「女オンチ」とは、著者本人が自分のために作った言葉。生まれながらにして「女らしさ」というものが分からず、美魔女信仰が甚だしい現代の世の 女性たちとはズレた感覚の自分を、楽しく綴っている。化粧もしないで結婚式に出る、占いが嫌い、更年期障害や老眼を悲観するどころか楽しむ…かといって、女を武器にすることを否定をするわけでもなく…。
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Profile
深澤真紀(ふかさわ・まき)
コラムニスト・淑徳大学客員教授。1967年、東京生まれ。早稲田大学第二文学部社会専修卒業。卒業後、いくつかの出版社で編集者をつとめ、1998年、企画会社タクト・プランニングを設立、代表取締役に。日経ビジネスオンラインで2006年に「草食男子」や「肉食女子」を命名、「草食男子」は2009年流行語大賞トップテンを受賞し、国内外で話題になる。『女はオキテでできている―平成女図鑑』(春秋社)、『輝かないがんばらない話を聞かないー働くオンナの処世術』、津村記久子との対談集『ダメをみがく――”女子”の呪いを解く方法』(紀伊國屋書店)、『日本の女は、100年たっても面白い。』(ベストセラーズ)など著書も多数。
古市憲寿(ふるいちのりとし)
1985年東京都生まれ。社会学者。若者の生態を的確に描出し、クールに擁護した著書『絶望の国の幸福な若者たち』(講談社)などで注目される。 日本学術振興会「育志賞」受賞。著書に日本社会の様々な「ズレ」について考察した『だから日本はズレている』(新潮新書)などがある。最新刊の 『保育園義務教育化』(小学館)では、女性が置かれた理不尽な状況を描き、その解決策を示す。