「深澤さんにはなりたくない」

古市:でも、なんか深澤さんって、社会にモノを言う人の立ち位置としては間違っていない気はしてます。

深澤:お、ほめられた?

古市:いや、社会にモノを言う人って、世間に受け入れられない部分が必要だし、深澤さんはそういう部分がたくさんある。誰も深澤さんになりたくない。そういう存在であるほど、社会に対して自由に発言できますよね。

深澤:あ、ほめられてなかった(笑)

古市:僕も深澤さんにはなりたくないです。

深澤:たしかに「なりたくない人」のほうがマシだと思ってる。誰かから目標にされたくないし、そもそも誰かを目標にすることもされることも、いいことだと思わない。

古市:面倒くさいしね。

深澤:私は若いときには、まわりから「市川房枝や上野千鶴子を目指せ」って言われたんだけど。

古市:そんなこと言われてたんだ(笑)

深澤:彼女たちには影響は受けたけど、なりたいわけじゃない。そういう期待はありがた迷惑というか、それに応えようとするとつぶれちゃうと思ってた。

 だから自分自身も若者の目標とされる人になろうとするのは、違うと思って。

古市:でも尊敬されたがったり、目標とされたがる人は多い。

深澤:私は、「深澤さんは面白いけど、ああはなりたくない」っていう人のほうがいい。いると面白いけど、目標にはしたくない人。

古市:たしかに、深澤さんにはなりたくないからなー。

深澤:2回言わなくてもいいじゃない(笑)

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Profile
深澤真紀(ふかさわ・まき)
コラムニスト・淑徳大学客員教授。1967年、東京生まれ。早稲田大学第二文学部社会専修卒業。卒業後、いくつかの出版社で編集者をつとめ、1998年、企画会社タクト・プランニングを設立、代表取締役に。日経ビジネスオンラインで2006年に「草食男子」や「肉食女子」を命名、「草食男子」は2009年流行語大賞トップテンを受賞し、国内外で話題になる。『女はオキテでできている―平成女図鑑』(春秋社)、『輝かないがんばらない話を聞かないー働くオンナの処世術』、津村記久子との対談集『ダメをみがく――”女子”の呪いを解く方法』(紀伊國屋書店)、『日本の女は、100年たっても面白い。』(ベストセラーズ)など著書も多数。
古市憲寿(ふるいちのりとし)
1985年東京都生まれ。社会学者。若者の生態を的確に描出し、クールに擁護した著書『絶望の国の幸福な若者たち』(講談社)などで注目される。 日本学術振興会「育志賞」受賞。著書に日本社会の様々な「ズレ」について考察した『だから日本はズレている』(新潮新書)などがある。最新刊の 『保育園義務教育化』(小学館)では、女性が置かれた理不尽な状況を描き、その解決策を示す。