金沢の芸妓の一言から商品に
福光屋は、1990年代から美容の研究にも取り組んでいる。今でこそ、日本酒成分を使った化粧品が増えているが、なぜ福光屋は化粧品開発に携わるようになったのか。
「金沢のひがし茶屋街の芸妓さんの一言がきっかけになりました。金沢の芸妓さんが、お客さんの飲み残した日本酒を肌につけていたのです。その芸妓さんはとても肌が白くきめ細かかった。その芸妓さんが『日本酒はこんなに肌にいいのだから、福光屋さん、日本酒を使った化粧品を作ったら』と言ってくれたんです。その話を聞いて、当社が開発したのが『純米酒すっぴん』という商品です。これは肌につけるために開発された“美容”用の“純米酒”です。純米酒なので飲むこともできますよ」(若月さん)。
いくら日本酒が肌にいいとはいえ、肌専用の日本酒があるとは驚きだ。「純米酒すっぴん」は、一般的な日本酒よりもアミノ酸の数値が高くなるよう生成されているのが特徴で、肌につけるとすーっと馴染み、すぐにアルコールの香りも抜ける。
しかし販売に際しネックとなったのが、アルコール度が13度ある“お酒”だということ。お酒だから酒販免許がないと販売できない。つまり酒屋でしか販売できないのだ。
そうしたことから、福光屋は数年をかけて開発を続け、2003年に商品化されたのがアルコール分ほぼ0%の「アミノリセ」である。
「アミノリセの主成分は、お米を麹菌、酵母、乳酸菌で約40日以上発酵させ、半年以上熟成させて造られたコメ発酵液です。美容にいいアミノ酸を多く含むように工夫して発酵させたものです。アルコールを生成させない特許技術によって発酵させていますが、日本酒の一種と考えていただいてかまいません。アミノ酸を、飲料用の日本酒の約3倍も含んでいます」(若月さん)。