リラックスとともに集中力を高める働きも

 テアニンが高めてくれる力、それは「集中力」だ。リラックス効果とは反対のように感じられるが、テアニンには集中力を高める働きも期待できるという。

 「18人の被験者を不安を感じやすい高不安群と感じにくい低不安群に分け、画面に特定の数字が表示されたとき、また、特定の音が聞こえたときにボタンを押す連続作業の実験を行ったところ、テアニンを摂取した高不安群は、心拍数が有意に減少し、視覚的注意は有意に高くなりました。また、反応時間も有意に改善しました(*3)」(小関さん)。

 これは、テアニンの摂取でリラックスした状態になったことにより、単調な連続作業を行うときのイライラを緩和することができ、作業の集中力が高まったからだと考えられるそうだ。

目的によりお茶とサプリを使い分けよう

 前述のストレス緩和や睡眠改善のデータは、テアニン200mgを摂取した場合のものだ。この量をお茶でとるのは難しい。ただし、「個人差があるが、被験者を不安になりやすい人とそうでない人に分けると、不安になりやすい人では50mgでもリラックス時にみられるα波が出現する効果がありました」と小関さん。テアニン50mgは玉露や抹茶を1〜2杯飲めばとれる量だ。

 しかし、テアニンをお茶でとろうとすると、カフェインも一緒にとることになるので注意が必要だ。カフェインには興奮作用があるためテアニンのストレスや睡眠への効果を弱めてしまうといったこともある。リラックスや快眠が目的なら、サプリメントでテアニンのみをとるのがおすすめだという。

 ちなみに、「テアニンは睡眠薬のように強く眠気を誘発するわけではないため、日中の作業や運転における安全性は確認されています。しかし、体感的にはボーッとした感じがするという人もたまにいるため、個人の体調に合わせて利用するようにおすすめしています」(小関さん)。

機能性表示食品の登場で注目度が上昇

 最近、テアニンが注目されるようになったのは、昨年の4月に登場した「機能性表示食品」の影響が大きい。

 機能性表示食品はトクホ(特定保健用食品)と似ているが、表示できる内容が違う。トクホの場合、その食品を食べた人に有効性があったかどうかの客観的な評価(血液検査のデータなど)がなければ表示は認められないが、機能性表示食品では、食べた人の主観的な評価をスコア化した研究結果も科学的根拠として認められる。そのため、「疲れ」「睡眠」「ストレス」などに関する表示ができるようになった。それで、テアニン入りの機能性表示食品が脚光を浴びるようになったのだ。

 睡眠やストレスの悩みを抱えている人は多い。薬に頼らずに改善したい人にとって、テアニンは注目の成分といえるだろう。

●出典
*1 Biol Psychol. 2007 Jan;74(1):39-45. Epub 2006 Aug 22
*2 日本生理人類学会誌 9(4), 143-150, 2004-11-25
*3 Higashiyama A et.al. Journal of Functional Foods (Impact Factor: 3.57). 07/2011; 3(3):171-178

文/村山真由美

日経Gooday「ストレスや不眠に役立つお茶成分“テアニン”って?」を転載

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