1カ月以上疲れが続いたら受診を

 また、疲労やCFSの状態に陥ると、自律神経・睡眠覚醒リズム・酸化ストレスなどいくつかのバイオマーカー(生物学的指標)に明らかに変化が起こることも解明されてきている(第1回「その疲れは「休め」のサイン!」、第3回「疲労の測定法はここまで進んだ」参照)。そうしたことから、疲労を訴える人が全員PET-CT検査をするのではなく、今後は、バイオマーカーで異常のある人がPET-CTで確定診断をするというように、診断のスクリーニングにもバイオマーカーが役立つようになると考えられる。

 いずれにしても、単なる慢性疲労だと思っていたら、脳の機能異常からくるCFSということもある。「慢性的な疲れが半年以上続けば、何らかの異常があると考えられます。1カ月以上続いた時点で遷延性疲労といい、要注意です」と倉恒さん。休息をとっても回復しないような疲れが1カ月以上続いたら、医療機関を受診しよう。

 まずはかかりつけ医やプライマリ・ケア(身近にあって、何でも相談にのってくれる総合的な医療)を担う内科開業医や市民病院、県立病院の総合外来を受診し、次のような道筋で、他の病気との見極めをしていくのがよいそうだ(表2)。ただし、慢性疲労外来の診療科目がある医療機関は数が限られている。

表2. 受診の流れ
表2. 受診の流れ

CFSの治療と治療後の見通し

 CFSの病因がまだ明らかではない現状では、効果が確立した治療法はまだ見つかっていない。倉恒さんらがCFS診療を行っている代表的な医療機関4施設に対して行った調査(2015年度中間報告、CFS患者177例)では、主に内科的治療(漢方薬、消炎鎮痛剤、ビタミン剤、還元型CoQ10など)、精神科的治療(SSRI、SNRIなどの抗うつ薬、抗不安薬、認知行動療法など)、伝承療法(鍼灸、運動療法、和温療法など)が行われていたという。

 予後(治療後の見通し)に関しては、2011年度実態調査結果では約1/4のCFS患者は専門の医療機関で治療を受けていても長期にわたって回復せず、自立した生活が困難であるため家族の支援が必要であった。また、約半数近くの患者は、自立生活を送っていても、長期にわたって疲労症状の軽減、増悪を繰り返し、社会復帰はできていない。「そのため、重症のCFS患者に対する公的な生活支援とともに、自立した生活が可能となった患者に対する社会復帰に向けての公的な支援が不可欠であると考えます」(倉恒さん)。

 幸い、休むことなく学校や会社に通うことができている患者も、医師の判断では7.5%、自己申告では20%みられており、CFSと診断された場合も医師との信頼関係や正しい情報のもとに治療を続けることが大切であると思われる。