「自分だけが生き残って申し訳ない」と自分を責める人も

――どういう症状が出るとPTSDだと診断されるのですか。

重村さん PTSDの主な症状は下記の4つです。

 こうした4つの症状が表れているかどうかが 、PTSDの診断の基準になります。以前の診断基準は3つでしたが、最近になって4番目の基準が加わりました。

 これだけでは専門用語で分かりにくいので、架空の人物として、大きな地震を体験した30代の女性Aさんを例にとって説明しましょう。

【架空の人物 30代女性Aさんの例で見てみると…】
 Aさんは、地震で家が倒壊してお母さんを亡くし、避難所で3カ月を過ごしたのち、仮設住宅に入ることができました。

 しかし、3カ月たっても、どこにいても地震の恐怖がありありとよみがえってきて身震いしてしまいます。こうしたフラッシュバックが起きるのが「侵入」です。

 そして、いつまたあの揺れがくるのではないかと常に身構えていて、どこかでカタッと小さな音がしただけでもビクッとしてしまいます。常に神経が高ぶっていて夜もぐっすりと眠れません。これが「過覚醒」です。

 さらに、被災したときに携帯電話で通報したため、それ以降も携帯電話を使うことを避けてしまいます。このように、思い出すことを必要以上に避けようとするのが「回避」

 そして、楽しいことがあっても楽しめず、涙すら出てこないのが「認知と気分の陰性の変化」です。「あと5秒早くお母さんに声をかけていれば助かったかもしれない」「自分だけが生き残って申し訳ない」と、いつまでも自責の念にかられ、「自分は生きる価値がない」とまで思ってしまうのです。