高校球児が証明した「笑顔」の力

 2014年夏の高校野球で、9回裏に大逆転を成し遂げた石川県の星稜高校野球部を覚えているだろうか。強靭な精神力をもって勝利を掴んだ彼らが掲げるスローガンは“必勝”ならぬ“必笑”。ピンチのときにも笑顔を見せる姿が印象的だった。選手たちは「笑うことでポジティブなイメージが湧くので、心身を落ち着けて前向きに戦える」と語っている。

 高妻さんは、あるTV番組の企画で笑顔の効能を示す実験を実施。笑顔のときと真剣な顔のとき、それぞれで100m走のタイムとピッチングの球速を記録した。結果として、100m走では笑顔のときに13人中7人のタイムが平均0.18秒縮まり、ピッチングでもやはり笑顔のときに9人の球速が平均12キロも速くなった。さらに選手たちからも、「笑顔のほうが力まずに動けるから走りやすい」「フォームがダイナミックになるのを感じた」などの声が挙がったという。

 普段から笑顔を心がけるのはもちろん、プレッシャーを感じる局面ほど意識的に笑顔を作ることで、知らず知らずのうちにパフォーマンスは向上する。ストレスで揺るがない強固なメンタルを養うためにも、まずは笑顔を意識してみよう。

この人に聞きました
高妻容一
高妻容一(こうづま よういち)さん
東海大学体育学部教授
1955年宮崎県生まれ。福岡大学体育学部体育学科卒業、中京大学大学院修士課程体育学研究科修了後、1985年フロリダ州立大学博士課程運動学習・スポーツ心理学専攻に4年半留学。1993年州立フロリダ大学へ1年間の研究留学。近畿大学教養部を経て、2000年より東海大学体育学部へ。現在、教授。2015年にも半年間、米国へ研究留学(IMGアカデミー、オリンピックトレーニングセンター、フロリダ大学、大リーグのチーム等)。1985~2001年日本オリンピック委員会のメンタルマネジメント研究班員。1994年から日本メンタルトレーニング・応用スポーツ心理学研究会をスタートし、事務局・代表を務める。東海大学スポーツサポート研究会メンタルトレーニング部門担当。

文/西門和美

日経Gooday「“苦しいときほど〇〇” スポーツ心理学者が明かすプレッシャーに強い人の共通点」を転載

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