簡易チェックで「うつ」度を確認

 自分自身でメンタル不調を自覚するときにも、疲労感、睡眠、食事の変調がポイントとなります。とくに、休日の土日に疲れが抜けない、平日の朝に起きられず、気力がわかないといったときは注意してみましょう。

 「サザエさんシンドローム」「朝刊シンドローム」といった言葉があります。これは、日曜日の夜に放映されているテレビ番組を見ると、明日から会社に行かなくてはいけないと憂うつな気分になったり、出社前に朝刊を読む気がしなくなるといった様子を表すものです。

 最近は新聞を取っている人が少なくなっていますが、朝のテレビ、インターネットのニュースや天気予報に関心が持てなくなるケースも同様です。こうしたことは、少なからず誰もが経験することですが、2週間以上長引いたり、普段よりもあきらかに気分の落ち込みがひどかったりするときには、家族や友人、職場の同僚や上司などに話してみて、一人で抱え込まないようにしてください。

 一過性の五月病ではなく、治療が必要なうつ病かどうかを知るための目安として、以下の簡易チェックを紹介しておきます。うつ病の診断は主に、WHO(世界保健機関)や米国精神医学会などでの診断基準をベースに医師により行われます。以下の簡易チェックはこれらの基準を参考に作成したものです。自身または部下の最近2週間の様子について、毎日5つ以上「はい」があれば注意が必要で、医師や専門家への相談を勧めます。ただし、生活や仕事に支障を来している、気分の落ち込みがひどいときなどは、「はい」の個数に限らず相談した方がいいでしょう。

◆うつ度の簡易チェックリスト(渡部さんによる)◆

1. 憂うつで重苦しい気分が続いている。
2. 周りの物事や活動に興味や喜びを感じない。

上司から見て部下の様子が、
※どちらか1つ、もしくは両方「はい(当てはまる)」の場合は3.以降の質問へ。
※2つとも「いいえ(当てはまらない)」で、仕事や生活に特段支障がない場合は、あまり心配する必要はないかもしれません。

3. 著しい食欲の増減、あるいは体重の増減がある。
4. 「眠れない」「寝すぎる」「夜中に何度も目が覚める」「早朝に目が覚める」などの問題を抱えている。
5. 焦燥感がある、または物事がはかどらない。
6. すぐに疲れる、または慢性疲労や気力の減退がある。
7. 自分自身を「価値のない人間」「能力のない人間」と考えている
8. 思考力や集中力の減退、また決断困難が続いている。
9. 「どこかに逃げ出したい(死んでしまいたい)」と繰り返し考えている。

 直近2週間の部下の様子を振り返り、1~9のうち「はい」が毎日5つ以上ある場合は要注意。

 生活に支障が出てきている、気分の落ち込みがひどい、原因不明の不調が現れている場合は、「はい」の個数に限らず、医師や心理相談員、臨床心理士、精神保健福祉士、保健師などに相談する。上司の自己判断は危険。2週間以上、続いているようであればすぐに産業医(もしくは心療内科医、精神科医)につなぐようにする。

 誰かに相談せずに自分で医療機関を受診するとき、メンタルクリニック(精神科)に抵抗があるようなら、まずは心療内科を受診しても構いません。平日の受診が難しいときは、週末に診療している医療機関も増えているので、インターネットなどで探してみるといいでしょう。

【まとめ】
・五月病が“六月病”になる前に対処を。
・「挨拶・疲労・睡眠・食事」の4つのポイントに注意する。
・メンタル不調が疑われる部下に声をかけるときは、4つのポイントの様子を尋ねる。励ますのは逆効果。
・上司は素人判断をせずに、専門家に連絡・調整をする。
・簡易チェックで部下の様子、自分の状態を確認。

この人に聞きました
渡部 卓
渡部 卓(わたなべ たかし)さん
帝京平成大学現代ライフ学部教授、ライフバランスマネジメント研究所代表、産業カウンセラー、エグゼクティブ・コーチ
1979年早稲田大学政治経済学部経済学科卒。モービル石油入社後、米コーネル大学で人事組織論を学び、米ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院でMBAを取得。90年日本ペプシコ社入社後、AOL、シスコシステムズ、ネットエイジを経て、2003年ライフバランスマネジメント社設立。職場のメンタルヘルス対策の第一人者として、講演、企業研修、教育分野、マスコミでの実績は多数に上る。著書に『折れない心をつくる シンプルな習慣』(日本経済新聞社)、監修書に『はたらく人のコンディショニング事典』(インプレス)などがある。

文/田村 知子=フリーランスエディター

日経Gooday「4つのポイントから部下のメンタル不調を察知せよ!」を転載

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