理想的なのは、深部体温が急降下するタイミングで就寝すること。そのため、眠る直前には深部体温を入浴やストレッチなどで上げてあげると、後に急降下させることができるので眠りの質が上がります。

 「寝る直前の食事は、消化のために内臓が活動を始めるので、深部体温が下がりづらく眠りの質が悪くなる原因となります。眠る直前には食べ過ぎないようにすることが大切。また、気温が高い夏であれば、深部体温の下降をサポートするように、エアコンをつけて寝室を涼しくしてから眠るといいでしょう」(小林さん)。

 ちなみに、深部体温が関係するのは睡眠だけではない。仕事のパフォーマンスにも関係する。高温時には心身の活動が活発になるため仕事などのパフォーマンスが上がるが、低温時には鈍くなってしまうのだ。

 したがって、重要なプレゼンをしたり、スポーツの試合をしたりするのであれば、深部体温が高く心身の働きが活発になっている時間帯が最適だ。だが、そんなに都合よくはいかないのが現実。だからこそ、「ライフスタイルやそのときの状況に合わせて、深部体温をコントロールすればいいんです」と小林さんは言う。

 例えば、深部体温が低い起床直後や午前中に会議やプレゼンがある場合は、シャワーを浴びたり温かい飲み物を摂ったりして深部体温を上昇させれば、パフォーマンスが上がりやすくなる。

 また、起床22時間後(朝7時に起きる人の場合は、翌朝5時頃)は最も体温が低く、この時間帯には極力、眠りについているようにしよう。「徹夜せざるを得ない場合は、このタイミングで30分だけでも眠るようにすれば、睡眠不足による心身へのダメージを減らすことができます」。

 このような体の仕組みを理解し、体のリズムに寄り添って生活をすれば、眠りの質は確実に高まっていくはずだ。

この人に聞きました
小林孝徳
小林孝徳(こばやしたかのり)さん
ニューロスペース社長
1987年生まれ、栃木県出身。新潟大学理学部物理学科卒業。ITベンチャー企業を経て2013年にニューロスペースを起業。筑波大学や医療機関そして多くの民間企業と連携し、産業現場での睡眠改善と労働生産性の最大化を専門とする。

文/西門和美=フリーライター

日経Gooday「ホルモンと体温、2つの生体リズムを味方につけて、ぐっすり快眠!」を転載

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