アルコールはもちろん、肥満に注意すべき

 左党の女としては悲しい限りだが、乳がんのリスクを考えると、お酒は控えめにした方がよいのだろうか? だが、リスクがあると言っても、問題はそのリスクの大きさだ。お酒を控えても、もっと大きなリスクを見逃していたら意味がない。実際のところ、飲酒はどのくらい気をつけるべきなのだろうか。

 教授に「やっぱり女性はお酒を控えた方がいいのですか」と泣きつくと、ちょっと安心する一言をいただけた。

 「アルコールが乳がんリスクを高めることは確かですが、過度に心配する必要はありません。乳がんリスクを高める要因として、今、最も危険視されているのは「肥満」、もう一つは「運動不足」です。肥満や運動不足によるリスクの方が、アルコールに比べて大きいのです。また、国際的には飲酒は確実なリスク要因になっていますが、日本人のエビデンスでは『データ不十分』という評価になっています。ただ、だからと言って安心して飲み過ぎないようにしてくださいね」(中村教授)。

 そうか、暗闇で一瞬光を見出したが、「肥満」という言葉を聞いて、再びびくっとする。おつまみをつまみながら酒を楽しむ左党にとって、肥満も切実な問題だからだ。

 「肥満は乳がんと密接な関係にあり、特に閉経後は顕著です。閉経後は卵巣機能が衰え、エストロゲン(女性ホルモン)が減少するので、乳がんのリスクは軽減されると考えられます。しかし肥満となると話は別です。その原因は乳腺の脂肪組織などに存在する酵素・アロマターゼにあります。アロマターゼには、コレステロールを出発点に生成される男性ホルモンの一種アンドロゲンをエストロゲンに変換する働きがあり、アロマターゼの活性は肥満の人ほど高くなるのです。つまり乳腺組織の中でエストロゲンが作られやすくなる。これが閉経後の乳がんの罹患率が上がる大きな要因とされているのです」(中村教授)。

 閉経後は脂肪がエストロゲンの大きな供給源になるなんて! 自分の周囲を見渡しても、左党の多くはお世辞にもスリムとは言えない体型だし、肥満が原因による痛風やら糖尿病の投薬をしている人も少なくない。WCRF/AICRのエビデンスグレードにおいて、肥満は閉経後では「確実」だという。ああ、痩せなくちゃ…。