多発性硬化症の症状は多岐に渡る

――例えば、どんな症状が現れるのでしょうか。

大橋:多発性硬化症の症状は実に多岐にわたります。大脳、小脳、脳幹、視神経、脊髄のどの場所に脱髄が起こるかによって、症状の現れ方やその程度は人それぞれです。脱髄は中枢神経のあちらこちらに発生しますので、毎回異なる症状が出ることもあります。さらに、脱髄は修復されてはまた繰り返し起こるので、症状も出たり治ったりを繰り返します。

 多発性硬化症の患者さんによく見られる症状には、次のようなものがあります。

表1 多発性硬化症によく見られる症状
表1 多発性硬化症によく見られる症状

 多発性硬化症の症状の出現頻度について調べた研究から、上記のうち、「感覚障害」「運動障害」「疲労」の頻度が高いことが示唆されています。

 また、多発性硬化症の患者さんに特徴的な「ウートフ現象(温浴効果)」と呼ばれるものもあります。これは、脱髄した部分が温度の影響を受けやすくなるために、運動、入浴、発熱、温かいものの飲食などで体温が上昇すると、一時的に症状が現れたり、悪化したりする現象です。これは一過性のものなので、体温が下がると元に戻ります。