上司の時間配分は「秘書の腕次第」

――秘書の仕事内容について教えてください。

伊田 上司のスケジュール管理が秘書の主な仕事です。

 スケジュール調整は、上司が仕事に専念しやすい環境づくりが中心となります。そのために社内外とコミュニケーションを取り、できる限り情報を収集します。

 社内会議のスケジューリングにおいて、最も重要なことは、優先順位を決めることです。さまざまな予定の中でも最優先させる必要があるものを見極めます。絶対に動かすことのできない予定であるか、別日に変更しても大丈夫な予定なのかという判断をしながら、予定を組み立てていきます。

 例えば、社長への報告や判断を求める声は、日々、社内から押し寄せます。定例ミーティングなどで、社長のスケジュールの7~8割は埋まっている一方で、重要度の高い緊急の案件も次々に入ってきます。場合によっては、すべての予定をキャンセルしてでも時間を割くべき案件もあります。個々の案件に、どのタイミングで、どのぐらいの時間を充てるかをできるだけ私のレベルで判断するためには、社内の人たちとの情報共有、コミュニケーションは欠かせませんね。

 また、社外の方との会話からも、上司の仕事を助けられるヒントを得られることが多くあります。例えば、パーティーや会食に同行することで、先方と上司との今の関係値を知る重要な情報を収集することができるので、スケジュール調整にも役立ちます。

竹内 秘書は常に上司の「仕事の時間」をサポートする役割があります。1分でも1秒でもいかに上司が有効に使える仕事時間をつくり出すかということが使命になってきます。上司の時間をつくり出すのは秘書で、スケジュール調整は秘書のスキルにかかっている。商談がどうなるかも、ある意味秘書の腕にかかっているところがあるんです。

島倉 上司の目線に立った時間の感覚が大事ですよね。私は秘書になってまだ10カ月ほどなのですが、そうした感覚が分かるようになりたいと思っています。例えば、会議が続くので、ここは30分空けてほしいと思うだろうなとか。前の会議が10分早く終わって次の会議まで少し時間があるならコーヒーを出すといいのではないかとか。細かいことですが、そうした「隙間」に何をしたらいいかを判断するために、普段から上司とのコミュニケーションが取れていなければいけないと思います。

添畑 私は上司が3人いて皆さんタイプが違うので、一人ひとりに合わせ、それぞれが気持ちよく仕事ができるように心掛けています。とても自由な職場環境で、これをやって、あれをやってと言われないので、逆に自分で仕事を探さなければなりません。

 そうした目で上司の日々のスケジュールを見ていると、「この予定が入ったときはこうしたほうがいいのではないか」といった気付きが出てくる。こうした気付きをもとにスケジュールを組んで上司に伝えると、だいたいOKをいただけます。社内ミーティングのスケジュール管理はすべて任せていただいていて、スケジュールを組んだ後に「こうしました」と報告を上げる形です。

――秘書は、上司に逐一スケジュールの確認を取る必要はないんですか?

竹内 上司によって対応は変わりますね。信頼してもらえた上でのことですが、「僕は君の手のひらで働かされているんだよ」といって秘書にすべてを任せる方もいます。出掛ける際、いつも秘書を同行させたいという方もいれば、座ったまま「いってらっしゃいませ」と送り出すだけでいいという方もいます。