参加者の情報をリサーチしよう

 接待客に喜んでもらうには、相手についての事前リサーチも欠かせない。例えば、お客が車で店まで来るのか、公共交通機関で来るのかで、場所の選び方も変わってくる。

 「車で来られる場合は駅から離れた住宅街にあるお店でも特別感があっていいのですが、公共交通機関を使って来られる方の場合は、会社から便がいい場所で普段利用していなさそうなお店を選びます」(渡邉さん)

 その他、趣味嗜好、健康状態など接待する相手の情報はできる限り事前に手に入れたい。「食品アレルギーがないかを調べるのはもちろん、ビーガン(完全野菜主義)の方の場合は、例えばだしをカツオではなく昆布で取ったものを出してもらえるお店を選びます。情報は主に先方の秘書の方から伺いますが、差し支えなければ会食に来られる方の好きな食材や、内容がかぶらないようにするため前後の会食の予定とその料理ジャンルも伺います」(渡邉さん)

「若い年代が多い会、女性が多い会など、会によって喜ばれる料理が大きく変わります」(渡邉さん)
「若い年代が多い会、女性が多い会など、会によって喜ばれる料理が大きく変わります」(渡邉さん)

 接待客が食品アレルギーを持つ場合は、あらかじめ店にその食品が入らない料理を出してもらうよう依頼するが、それにもいくつか注意ポイントがある。

 まずは、食事の席でアレルギーがあることが周囲に分からないよう気を配る。衆人の前でアレルギーを明らかにするのは、先方に失礼になるからだ。「接待の席で『アレルギーの方はどなたですか』などとお店の人が聞かないよう、事前に席次表を渡し、どの方に当該料理を出すかを綿密に打ち合わせます」(渡邉さん)

 差し替え料理が元の料理と同様に見えることも重要だ。例えば、接待客に甲殻類のアレルギーがありメニューに蟹料理があったら、他のお客の蟹料理と同じに見える料理を出してもらう。「もしそのお店が、元の料理と見た目が変わらない料理を出せないなら、出席者全員の料理を差し替えてもらいます」と渡邉さん。ここまでするのは、差し替えた料理の見た目が違うと、そちらのほうがおいしそうに見えるといったこともあり得るから。特に職位が下の人にその料理が振る舞われると、その場の空気がぎくしゃくしてしまう。

 お酒が飲めない人がいる会食の場合も同様の配慮が必要だ。そうした人にはあからさまなソフトドリンクではなく、ビールやワインに見えるノンアルコールドリンクを出してもらう。アレルギー情報同様にどの席の人物がお酒が飲めないかを店側に伝え、さりげなく指定した席にノンアルコールドリンクを出してもらうようにするのだ。

 「会食は、次の仕事を円滑に進めるため、お互いの距離感を縮めようと席を設けている場合が多々ありますが、飲めない人がいると場がしらけます。お店の人に『ノンアルコールビールの方はどちらですか?』などと言われてはその場が台無しになるので、しっかりとした準備が必要です」(渡邉さん)。ホスト側の職位が一番下の人にも同様の情報を伝え、会が円滑に進むよう気を配ってもらうことも大切なポイントだ。