イタリアンは会食に重宝する

 なお、会食が小規模で、相手が苦手な食材などを事前に十分にリサーチできなかった場合は、イタリア料理のレストランなどで前菜、メインなどメニューから食べたいものを選べるプリフィクススタイルのコース料理を提供している店を活用するとはずさない。東京・広尾のイタリアンレストラン「アッピア」のように、野菜から肉、魚介類まで自由に好きな素材を選び、調理方法も指定できる店もあるので、最終手段としては、そうした店を利用するのもいいという。

 「一般的に会食=和食というイメージがありますが、和食ばかり続いたのではお客様も飽きてしまいます。一皿のポーション(分量)が少なくあまり油を使わない洋食なら健康に気を使われている方にもヘルシーで喜んでいただけますし、年配の方などは意外にステーキをはじめとする肉類をよく召し上がります。十分なリサーチをせず思い込みでお店を決めると、喜ばれるお店の方向性が違っていたりすることもままあるのです」(渡邉さん)

 一方、接待ランチの場合はたいてい時間が限られているので、食事の内容よりも、きっちり時間内に会計に至るまでサービスを終えてくれる店かどうかが店選びの最大ポイントとなる。「銀座の『銀座うかい亭』のようにランチ会食に慣れた店ならば、30分しかないと伝えれば必ずその時間内ですべてを済ませてくれます」(渡邉さん)

 会席料理は時間がかかるので、和食ならば松花堂弁当を出すところを選ぶのも一つのコツ。また、ミーティングを兼ねて、資料を読みながら食事を取るケースが少なくない。あまりテーブルの場所を取らない料理や、汁が飛ばない料理、その場に何度もサービスの人が来ないような料理であることにも気を配りたい。

社内宴会でも参加者次第で選ぶ店が変わってくる

 社内宴会の場合は、参加者がどういうメンバーなのかを考えることが肝要だ。若い年代が多いならば、おなかが満たされる揚げものやボリュームがある料理を多く用意する。年配者が多い場合は、ボリュームより料理の質や品数が大事で、お刺身やお寿司、乾きものが喜ばれると言う。

 さらに女性が多い場合は、メイン料理を少なくしてデザートやフルーツを多く出してくれるよう手配するのが鉄板ルール。渡邉さんは、女性中心の秘書の会などでは、デザートは通常の1.5倍を目安に用意してもらうそうだ。

 飲み物は、予算がタイトであれば飲み放題を頼むのがよいが、飲み放題にする場合も参加者の満足度をさらに高めるコツとして、事前に店側と交渉するとよいそう。

 飲み放題をうたっている店では、焼酎やビールは最後まで切れることはなくても、ワインは高コストであるため本数に限りがあることが少なくない。そのため、ワインを好むメンバーが集まるのなら、事前に飲み放題メニューの中から日本酒をなくしたりソフトドリンクの数を絞ったりして、ワインを最後まで出してもらえるよう掛け合う。なお、女性が多い場合は女性が好みそうなドリンクを多く用意することも考えたい。

 季節のメニューがある店や、その時期に相手が食べたいと思うような店を選ぶことも大切だ。例えば、1月はお正月におせちをはじめとする和食を食べ飽きているので、中華や洋食にすると喜ばれやすい。

 「冬は、この季節に旬を迎えるクエなどの魚や、一人ずつ小鍋で出してくれるスッポン鍋のお店などもいいでしょう。春になれば、フキノトウなど早春の山菜を天ぷらで出してもらえる店にする。そうすると、『もうこんな季節なんですね』と食事中の会話も弾みやすくなります。季節だけでなく、相手の方が日本酒やワインがお好きだったら、そうしたお酒が豊富なお店を選びます。会話の誘い水になってお互いの距離が縮まり、仕事の発展にも結び付きやすいからです」(渡邉さん)

 会社関係の会食や宴会の店選びに苦労している皆さんは、是非こうした「プロ」の店選びを参考にしてほしい。

文/大塚千春 写真/稲垣純也 取材協力/こちら秘書室 撮影協力/天現寺大使館

プロフィール
渡邉華織
渡邉華織(わたなべ・かおり)
ぐるなび運営サイト「こちら秘書室」担当室長。サイト登録の秘書3万5000人の「まとめ役」。日系航空会社勤務を経て、大手金融会社や流通会社の社長秘書、外資系コンサルタント会社の会長秘書――と20年にわたり大企業のトップ秘書として活躍してきた経歴を持つ。自身も含む現役秘書が直接目利きした手土産情報サイト「接待の手土産」も手掛ける。