結果ではなくプロセスをほめて、信頼関係を築く

 2つ目は、「プロセス承認」。結果ではなく、「過程」をほめるということです。

 私たちは普段、プロセスではなく結果を重視しがちです。仕事では特に、よい結果や成績を求められるので、結果を重視するのは当然ともいえます。しかし、成功したときはいいとしても、失敗したときに結果だけを見ていると、ほめるところがゼロになり、落ち込んだまま前に進めなくなってしまいます。

 自分や人を成長させるためには、落ち込んだ状態から素早く回復し、冷静さを取り戻すことが大切です。なぜなら冷静になることで、ようやく失敗した原因を分析したり、今後にどう生かすかを考えられたりするからです。

 たとえ失敗したときでも、それまでの過程の中にある「よかった」部分をほめてもらえると、落ち込んだ状態からの回復も早くなります。上司や同僚から、「(契約は取れなかったけど)積極的に新規開拓をしたチャレンジ精神が素晴らしい」「(企画は通らなかったけど)以前よりもプレゼン力が格段にアップしていた」と言われたら、どうでしょう? 仕事に対する意欲が湧いてきて、再び「頑張ろう」と思えるのではないでしょうか。

 1980年代に、「愛少女ポリアンナ物語」(フジテレビ系列/ハウス世界名作劇場)というテレビアニメが放送されていました。小さい頃、私はこのアニメが大好きだったのですが、どんなにつらい状況の中でも「よかった」と思えることを探し、それを口に出して伝える物語の主人公・ポリアンナは、その前向きさで周りの誰からも愛される少女でした。

 ポリアンナのように、つらいことや苦しいことの中からでも「よかった」ことを探せる人は、きっと周囲の人たちにポジティブな影響を与え、前向きな信頼関係を築けます。結果がどうあれ、プロセスの中で「よかった」と思える部分を見つけてほめる。挨拶などの「存在承認」がしっかりとできている相手には、この「プロセス承認」を意識して接してほしいと思います。

結果もほめて、喜びを分かち合える関係に

 そして3つ目の段階は、「結果承認」。プロセスだけでなく、やはり「結果」もほめることが大切です。

 「契約が取れたとき」「企画が通ったとき」「大きな仕事を任されたとき」など、仕事でうまくいったときに一緒に喜んでくれる相手がいたら、うれしさも倍増します。仕事では、一つの目標を達成しても、また新たな目標を達成する必要があります。常に結果を出し続けることが求められるので、喜びを分かち合える相手がいれば、その都度気分を新たにして、ポジティブな気持ちで前に進めます。

 もしも口に出して言うのが恥ずかしいなら、メールなどを活用して、文字で伝えるのもいいですね。伝えたいことをゆっくりと考えられますし、よりよい表現にブラッシュアップすることもできます。「ほめ」のバリエーションを増やすトレーニングにもなるので、まずは文字で練習するのもオススメです。

 ただし「結果承認」は、しっかりと「存在承認」と「プロセス承認」の段階を踏んでいてこそ、効果があるもの。挨拶もしない、プロセスも知らない相手からほめられても、誰だって心には響かないはず。まずは基本の第1段階、そして第2段階と進んで、最終的には結果を喜び合える関係性を築きましょう。

*今週の宿題*

「挨拶」や「感謝」の言葉を、相手の顔を見て笑顔で伝えましょう。
「おはようございます」「ありがとうございます」「おつかれさまです」などがしっかりと言えている相手には、「プロセス承認」と「結果承認」も試してみて。

意外と簡単な3つのステップ。結果を喜び合える理想の関係を目指そう  (C)PIXTA
意外と簡単な3つのステップ。結果を喜び合える理想の関係を目指そう  (C)PIXTA

聞き手・文/青野梢 イラスト/北村みなみ 写真/PIXTA