「Iメッセージ」は仕事でも使えるテクニック
積極的にほめたとしても、世の中には「ほめられ下手」がたくさんいます。「いやいや私なんて……」「そんなことないですよ」という反応は非常に多いので、そんなときには、相手がほめ言葉を受け取りやすくなるよう「Iメッセージ(アイ・メッセージ)」を使ってみましょう。
「Iメッセージ」とは、「自分が相手からどんなポジティブな影響を受けたのか」を伝える方法です。例えば、「○○さんに会うと元気になる」や「○○さんといると楽しい」など。相手の存在や行動から、自分がどんなにいい刺激を受けたのかを伝えることがポイントです。仕事で使える「Iメッセージ」には下記のようなものがあるので、アレンジしながらぜひ職場で使ってみてください。
【仕事で使えるIメッセージ】
「○○さんの仕事の正確さを私も見習いたい」
「休憩中に資格の勉強をしてるんだね。私も勉強しなきゃと思って気合が入った」
「作ってくれた資料を見たよ。分かりやすくて助かる」
「疲れててもいつも笑顔だよね。見てると私も頑張ろうと思える」
「あのプロジェクトうまくいったんだね。私もやる気が出てきた」
そして相手に直接伝えるだけでなく、「その場にいない人」をほめることもオススメです。仮に自分がほめられた側だとしたら、どうでしょう? 第三者から「○○さんがあなたのことをほめてたよ」と聞かされたら、ほめた人の好感度は急上昇しますよね。また間接的に人をほめると、周囲には「相手のポジティブな面を見ることができる人」と印象づけることもできます。ただし、会話をしている相手にとって、ライバル関係にある人や、仲の悪い人のことをほめたら逆効果。伝える相手にだけは注意して、ほめるようにしましょう。
自分よりも優秀な同期や後輩… ほめづらいときは
では、「ほめたほうがいいと分かっていても、ほめづらい……」という場合には、どうすればいいのでしょうか。同期や後輩などが、自分よりもいい成績を上げたときなどは、素直に「おめでとう」とは言いづらいですよね。
逆説的な方法ではありますが、こんなときには潔く「おめでとう」と言ってしまったほうがいい。ほめると決めて、まずは行動に移すのです。真面目な方は、「それって嘘をつくってこと?」と思うかもしれませんが、素直にほめたほうがいいと分かっている場合、ほめなければ後悔だけが残ります。ならばいっそのこと、「おめでとう」と先に口に出すことで、気持ちを後から追い付かせるのです。
不思議なもので、相手が喜んでくれると、「言ってよかったな」という気持ちになります。すると「自分も○○さんのように頑張ろう」と思えてきて、最終的には「おめでとう」と言った言葉が嘘ではなく、本心になってくる。理想とする姿に合わせて先に行動することは、自分の気持ちをポジティブな方向にマネジメントすることでもあるのです。
もし、「おめでとう」だけを言うのが難しいなら、その中に本音を混ぜるのもいいでしょう。例えば、「成績トップだね、おめでとう。内心あせったけど、自分も頑張ろうと思った」など。少しだけ本音を混ぜつつも、相手の負担にはならないよう「Iメッセージ」を使いながらほめてみましょう。
最初のうちは、「ほめる」ことも「ほめられる」ことも、難しいと感じるかもしれません。しかし、小学生のときに必死で覚えた九九が、中学生になったら何の苦労もなく使えるようになったのと同じで、意識して練習することで、ある日突然、ほめて・ほめられる関係が当たり前になっているかもしれません。ぜひ今日から、日常に「ほめコミュニケーション」を取り入れてみてください。
*今週の宿題*
身近な人を、「Iメッセージ」を使ってほめてみましょう。
評価するのではなく、まずは「ありがとう」と感謝できることを見つけて伝えるのがオススメです。
聞き手・文/青野梢 イラスト/北村みなみ 写真/PIXTA